東海愛知新聞バックナンバー
 9月5日【金】
5戸が退去を承諾
被災で家屋解体着手へ
岡崎市

岡崎市はあす6日、集中豪雨で死亡した杉本富美子さん(80)の自宅を含む城北町と元能見町の家屋五戸の解体工事に順次着手する。居住者からは書面でのサインによる退去の承諾を得た。伊賀川沿いに建つ5戸は、豪雨で増水した川の濁流が家屋の土台を大幅に削るなどして全壊指定を受け、居住継続不可能と判断された。

倒壊した家屋が川の流れをせき止める二次被害を防ぐために行う。解体費用は市側が全額負担する。

5戸のうちの1戸に住む女性(40)の家屋は土台の3分の1が濁流で失われた。二次被害の危険性を指摘され、市から退去を言い渡されたが、「移転補償についての説明はまったくなかった。訪れた職員に聞いても、補償自体あるのかどうかは明言せず、『解体が決まったので了承してほしい』とだけ言われた」と憤る。退去の承諾は「二次被害を恐れて、承諾せざるをえなかった」と話す。

女性は現在、市内の両親宅に一時的に身を寄せているが、仕事は休業中という。「一時的な避難として、風呂のない市営住宅を用意すると言われたが断った。どこに避難しようと、自営の仕事をしながら新たな居住地を見つけるのは無理」と不安を募らせる。

市の対応は「移転補償の説明もなく、何かしてくれるのか、してくれないのかさえもはっきりしない」という。「被災者から見れば補償よりも、取り壊しを優先しているようにしか見えない」と怒りをあらわにした。市は「移転費用額は居住者との今後の話し合いの中で決めるため、まだ確定できないが、適切な移転費用は何とかすると居住者に伝えた」と釈明。

5戸については、正式な移転契約を締結する前に取り壊しを行うため、物件調査を進めている。移転費用は、河川改修の協力を求めた県と協議しながら、調査を元に金額を決定するという。

移転交渉に対策班

岡崎市は、伊賀川沿いの家屋5戸の移転交渉を行う「特定財産対策班」を財産管理課内に設置した。4日は市役所東庁舎で、柴田紘一市長が同班に配属された職員に異動通知書を交付した。

交付式では柴田市長が後藤鉱一班長に通知書を手渡した。市長は「豪雨では甚大な被害が出ました。災害予防の根本的な解決として、河川改修は急務。市が先決する5戸の家屋移転を理解してもらうため、努力していただきたい」と述べた。




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