東海愛知新聞バックナンバー
 5月3日【土】
ムササビ坊や「クーちゃん」
6年生が交代で世話
木から落下?骨折は全治
元気に育つ

岡崎市生平小

岡崎市生平小学校(原博司校長)の校長室でムササビの子ども「クーちゃん」(オス)が元気に育っている。同市秦梨町内の山林で保護されてから2週間。6年生23人が四人一組になって交代で世話を続ける。生き物に触れながらいのちの尊さを学ぶいい機会。小動物飼育の専門家の指導を受け、今後は山へ帰す準備もする。
 「わあー、かわいい」「脚の間に膜があるよ」「ウンチは臭いの?」
 昼休みになると6年生4人が校長室にやって来る。温めた牛乳をやり、ヒマワリの種やアーモンド、小麦などを与え、下腹部を柔らかいキッチンペーパーで刺激してオシッコとウンチをさせる。
 拾われたのは4月18日朝。タケノコ掘りに出かけた女性が木の根元にいるのを見つけた。秦梨小学校で児童に見せたが、同小ではムササビを飼うことができないと、18日午前中に隣町の生平小へ持ち込んだ。生平小は県の愛鳥モデル校。野鳥の観察や保護活動で知られる。
 ムササビは体が冷えて元気がなく、左の後ろ脚がだらりとしていた。翌19日、獣医師に診てもらうと脚の骨が折れていた。木から落ちたらしい。
 「どうすればいいのか」。原校長は、かつて同小で鳥について講演をした山口仁さん(64)=豊川市萩町=に電話で尋ねた。山口さんは豊橋総合動植物公園で主に鳥の繁殖に携わっていた。小動物にも詳しい。「市販されているペット用牛乳を与えたらどうでしょうか」
 原校長はムササビを段ボール箱に入れて自宅へ持ち帰り、翌朝また学校へという日々。「クーちゃん」という愛称は「グルル」と鳴く声をもじって原校長の娘さんが付けた。
 22日に県西三河県民事務所の環境保全課で、1カ月間の「保護飼養」許可を受けた。当初230グラムだった体重は300グラムに増え、体長は25センチ、尾の長さは20センチ。“空飛ぶ座布団”らしく立派な飛膜がある。成獣の半分にも満たないが、骨折は治り人懐っこく愛くるしい目で餌をねだる。
 30日に学校を訪ねた山口さんは「これからは牛乳を浸した食パンや、便が固まらないようドングリもやってください」と話した。
 6年生が世話を始めたのは29日から。児童たちは「山へ帰ってもまた学校へ来てくれないかな」「結婚して子どもを作ってくれないかな」などと言うが、難しいのはクーちゃんの〈自立〉。天敵から身を守れるか、巣を作れるか、自分で餌を食べられるか――。山口さんのアドバイスは、まだまだ必要だ。





HOME