東海愛知新聞バックナンバー

 12月18日【日】

高付加価値の農作物を

幸田 低温プラズマ実証実験

幸田町内のビニールハウスで低温プラズマの農業利用を検証する実証実験が行われている。昨年度から名古屋大学と同町、豊根村の三者で行っている事業の一環。プラズマを使って育てたイチゴの

  1. 実の抗酸化物質蓄積量
  2. 成長促進効果
  3. 病原菌や病害虫の除去効果
  4. 実の栄養価や味、安全性

―などを調べ、今年度内に効果をまとめる。(横田沙貴)

プラズマは、高熱や電気などを与えて物質を活性化させる状態のことで、「気体」「液体」「固体」に次ぐ第4の状態と言われている。高熱で変化させた「高温プラズマ」は、アーク放電や核融合反応などで知られ、大きなエネルギーをつくり出す。熱ではなく電力で物質を変化させる「低温プラズマ」は、半導体の加工や殺菌滅菌などで広く活用されている。

ヘリウムガスとアルゴンガスに電気で刺激を与えて発生させた低温プラズマを苗に照射するとともに、点滴用生理食塩水に低温プラズマを照射した「プラズマ照射溶液」を定期的に与えている。また、420株に対して照射時間や溶液の濃度を変えた19パターンを試している。

今回の実験では昨年度の事業で試作された「低温プラズマ水処理装置」と、今年度開発された「低温プラズマ源自動搬送装置」を使用。搬送装置は、苗の根元を覆うケースの中に照射装置が収められており、一定の時間になると、苗の位置を自動で感知し、設定された時間だけプラズマを照射する。

同大未来社会創造機構の橋爪博司特任助教によると、低温プラズマ生成時に空気中の酸素や窒素などが電気に反応して活性化。特に酸素は生物の細胞を破壊する効果がある「活性酸素」に変化する。植物は活性酸素が多いと身を守るためにビタミンCやアントシアニン、カテキンなどに代表される「抗酸化物質」を蓄える。これらの成分は酸化(老化)を抑える効果があるとして美容・健康などの分野で注目されている。さらに、抗酸化物質が増えることにより作物自体が強健になり、成長促進効果が期待できるとしている。

同大などはこの働きに注目。低温プラズマで人為的に負荷を与えて高付加価値・高抗酸化効果のある農作物が作れるか、農業用プラズマ機器の開発、成長に適した負荷の度合などを試している。

橋爪さんは「イチゴの生育は順調。実の分析結果はまだ出ていないが、プラズマ照射溶液を使ったイチゴは収穫量がほかと比較して多いように感じる。協力してくれるイチゴ農家から『苗が元気に見える』という声がある」と話している。

三者が行う低温プラズマ技術実装化推進事業は平成27年度からの地方創生交付金を使った継続事業。昨年度は豊根村でチョウザメの淡水養殖を通じた実証実験(継続中)とそれに関わる低温プラズマ発生機器の試作・開発を実施。開発などには同大やベンチャー企業、町内のものづくり企業が関わっている。