幸田町と名古屋大学、測量などのシステムを開発している「アイサンテクノロジー」(名古屋市中区)などによる自動車の自動運転技術の実用化に向けた実証実験が、町内で始まった。現在、道路や信号機、横断歩道などの地形情報を専用車両で計測しており、それらの計測データからセンチ単位の誤差にとどめた高精度の三次元地図を作成。その地図を基に、市販車にレーザースキャナーやカメラを取り付けた「ロボカー」が、4月をめどに走行する。
同大が開発に携わる自動運転技術を使った公道での実証実験は、名古屋市守山区と石川県加賀市に続いて3例目だが、自治体全域を対象とした広域エリアでは初めて。
計測は1月20日にスタート。同社が所有する専用車両は、高精度のカメラ2台のレーザーを用いた計測器とGPS(衛星利用測位システム)を搭載。GPSが情報を受信するまでの時間差を利用し、レーザーで感知した情報を三次元化する。2月中に計測を終えて、三次元地図の作成に着手する。
三次元地図の完成を待って走行するロボカーは、北部のJR相見駅(相見)、町役場(菱池)、隣接する蒲郡市との境に位置する愛知工科大学、幸田サーキットYRP桐山(桐山)の主要施設として選ばれた4カ所を行き来する。町民をモニターにした試乗も予定しており、目的地に到着するまでの乗り心地を体感してもらう。走行は同大と県が策定する事故防止のガイドラインを順守する。
ロボカーの走行に当たり、地図情報のリアルタイム更新も試みる。「横断歩道ができた」「信号が設置された」といった交通環境の変化をロボカーが感知すると、ネットワークを経由して同大に情報が送信され、三次元地図上に反映される。
三次元地図を基にした自動運転走行の手法は多くの場合、一般道での使用を前提として採用されている。だが、障害物や歩行者などの位置推定は地図の精度に左右されるため、今回作成される地図ほど高精度のものを利用した走行は珍しいという。
同社経営企画室の加藤淳さんは「JAXA(宇宙航空研究開発機構)の準天頂衛星『みちびき』が打ち上げられたことで、現在より精度の高い地図データが作成できるようになる」と自信を見せる。
実験を主導する同大情報科学研究科の加藤真平准教授は「新しい技術は産学官で連携しなければ広まらないため、この実験は意義深い。自動運転の普及に向けた弾みにしたい」と意気込んでいる。
同町は国道248号や23号岡崎バイパスなどの幹線道路が通ることから交通量が多い一方で、町民の高齢化や過疎化が進む地域が点在。加えて、名鉄バスの一部路線の廃止で町民の移動に支障が出る地域もあり、自動運転に対するニーズが見込まれた。
町は、策定した「企業立地マスタープラン」の中で、企業の技術発展を目的とした自動運転技術、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)に代表される「グリーンモビリティ産業」を、新産業創生の3本柱の1つに位置づけている。町と同大はこれまでに、農水産用の低温プラズマ機器の開発などで連携してきた実績がある。