おかざき世界子ども美術博物館を核とする岡崎地域文化広場が、昭和60(1985)年のオープンから30周年を迎えた。約6万9,000平方メートルの広大な敷地に「妖精の棲む浮かぶ島」、「展望の丘」、「芸術の森」、野外ステージ、遊具などが点在する中、国内外の巨匠らの幼少期の作品を収蔵する同館は、学芸員による調査・研究が行われる国内で唯一の「子どものための美術館」として、市内外から訪れる親子でにぎわう。(今井亮)
同広場は、県が各自治体の文化的拠点整備として打ち出した「地域文化広場」構想に、美術教育を重視してきた岡崎市が名乗り出る形で整備。県と市の共同事業で、総事業費は約22億7,000万円。このうち、美術館部分の建設費6億円を県が負担し、58年から2年をかけて完成した。
50年以上前から市内の園児と小中学生の作品が一堂に集まる「造形おかざきっ子展」を開催してきた同市。保護者の要望を受けて、図工・美術教諭の間では国内初となる“子ども専用美術館”の構想があった。
地域文化広場がオープンする以前は、当時の建設予定にあった「太陽の城」や市竜美丘会館内への整備が検討されていたという。オープンに伴い、中心市街地一帯で開催されていた「造形おかざきっ子展」は、60年の第22回から会場が移された。
同館の開館記念を飾った特別企画展は「ピカソ展」と「美術家十代の作品展」。同展で自身の幼少期の作品が展示された岡本太郎さんが来場した。開館後は企画展が年に平均5回のペースで開催され、現在までに延べ200回を数える。開館から7年後に来館者100万人を突破し、2年前に400万人に達した。
開館と同時に進められてきたのが、巨匠の幼少期の作品収集。モネ、ムンク、ピカソ、ロダン、岸田劉生、平山郁夫、村山槐多、山下清らの約300点を収蔵している。
「入手が可能な現役時代の作品とは異なり、幼少期の作品は現存しているかどうかも定かではないという点で、希少な価値を持つ」と同館の担当者。「『本物』を鑑賞してもらい、教育機関と連携しながら、岡崎を担う子どもの感受性を養う手伝いをしていきたい」と話す。
あす13日から7月12日までは、収蔵作品を展示する開館30周年記念特別企画展「世界の巨匠たちが子どもだったころ」が開かれる。