東海愛知新聞バックナンバー

 5月28日【木】

知識、技術 役立てたい

岡崎の佐藤さん
被災国ネパールで医療援助

岡崎市民病院の臨床検査技師・佐藤千歳さん(35)が、日本政府の国際緊急援助隊医療チーム(1次隊)に参加し、マグニチュード(M)7.8の大地震に見舞われたネパールで医療援助に従事した。公務ではなく、約7年前に個人で登録したJICA(国際協力機構)を通じてチームに招集された佐藤さんは、被害が報道される首都カトマンズ以外の被災地で、持てる知識と技術を発揮した。(今井亮)

■2時間で準備

招集がかかったのは地震から2日後の4月27日午後8時ごろ。佐藤さんは参加を決意し、市の職業専念義務免除の申請など、2時間で出勤態勢を調整。翌日の正午ごろには、佐藤さんを含め全国から集まった医師や看護師ら47人のチームが成田空港を離陸した。

タイを経由してネパールに入国。WHO(世界保健機関)の指示で、チームはカトマンズから北東に車で約3時間の標高800メートルに位置するバラビセ村に向かった。

「カトマンズを上回る惨状でした」と佐藤さん。車で走る村までの道は何カ所も崩落しかけ、村に入っても損壊した家屋のがれきは重機ではなく、人の手で片づけられていた。村の学校に間借りした救護テントには、けが人を背負って山間地域から5時間歩いてたどりついた村民もいたという。村に滞在した8日間の活動では、1日に60〜90人を受け入れた。

救護した患者の大半はねんざや骨折といった外傷だった。佐藤さんは処置に伴う血液検査や超音波検査、手術前の感染症検査をはじめ、担架搬送も手伝うなど時には医師や看護師の支援に回った。

■恩返しで参加

寄生虫学を専攻し、大学院生の時に研究で2度、ネパールを訪れた。「馴染み深い国への恩返し」が、チームへの参加を決めた一つの理由だった。

5年前はパキスタンを襲った洪水被害でチームに加わった。「災害を知るたび、困っている人に手を差し伸べるのが医療従事者として本来あるべき姿だと思います」と佐藤さん。「派遣で迷惑をかけている家族や職場の同僚には申し訳ない気持ちでいっぱいですが、持てる技術が少しでも役に立てるなら」と話す。