岡崎市明大寺町の自然科学研究機構生理学研究所は25日、細部まで撮影できる最新型の7テスラ超高磁場磁気共鳴画像法(MRI)装置を導入した。同様の装置は世界では50台程度が稼働しており、日本での導入は4台目となる。(横田沙貴)
MRIは強力な磁場と電波の照射により、体内の水素原子の分布を計測し、体内の構造を画像化する方法。今回導入されたMRI装置は病院で検査に用いられる一般的な装置より2〜5倍ほど高い磁場を発生させられる。細胞の収縮を感知しアルツハイマー病の前兆感知、生活習慣病による血管損傷の判定などに利用できるほど、広範囲にわたって細部の構造まで見ることができる。血流や代謝活動も可視化できるため、より詳細な脳の働きが観察できるようになる。
装置の重量は約40トン、人を乗せるテーブルは250キロの荷重に耐えられる。内部は直径60センチ。装置外へ漏えいする磁場を低減させる特殊なマグネットを使用しており、安全性にも配慮されている。約10億円。既存のMRIが設置されていた磁気共鳴装置棟に同MRIを運び入れ、「超高磁場磁気共鳴棟」として新規開所。25日に開所式も行われた。
生理研は装置を利用して、脳活動の詳細な可視化と活動原理の解明、関連学会と協力した国内における利用ガイドラインの策定、装置自体の技術開発を行うという。
井本敬二所長は「7テスラ超高磁場MRIは今後さらなる技術開発が必要とされている。態勢が整えば、来年度から共同利用も開始する。7テスラ超高磁場MRI応用技術の発展と、これを用いた学術研究の発展に尽くす」とあいさつした。
心理生理学研究部門の定藤規弘教授は「脳の詳細な情報を取り出すという医学的に大きなインパクトを与える意味のある研究。7テスラ超高磁場MRIが日本に広く行き渡る状態になるための一助になれば」と意気込みを語った。
また今年度から、国内で7テスラ高磁場MRI装置を稼働させている新潟大、岩手医科大、情報通信研究機構(大阪府吹田市)、今後同装置を導入する予定の京都大の4つの大学・研究機関と連携し、双方向型連携研究を行う。情報や人的な交流を通して、検査手法の共通化や技術水準の向上、次世代を担う人材育成につなげるのが狙い。