文化資源として「ジャズの街岡崎」のPRに力を入れるため、ジャズに携わる岡崎市内の4ボランティア団体を中心に設立された「ジャズの街岡崎発信連絡協議会」。その核を担い、同市の内田修ジャズコレクションの活用事業をサポートするNPO法人「ブルー・ウェーブ・ジャズ・フォーラム(BWJF)」が、これまでになかった新たな試みに挑戦している。顕著なのは市外に目を向けたPRだ。(今井亮)
22日夕方。名鉄蒲郡駅構内にある観光発信拠点「蒲郡市観光交流センター(ナビテラス)」に、協議会長を務めるBWJF理事長の柴田剛太郎さん(66)ら役員の姿があった。市民や駅の利用者に無料で楽しんでもらう、協議会主催のライブ「JAZZコンサートinナビテラス」のためだ。
出演は、岡崎市出身のジャズボーカリスト、今岡友美さん。「踊り明かそう」「テネシーワルツ」「卒業写真」など、構内に響く今岡さんの歌声に引き寄せられ、1時間以上のライブを約200人が聴き入った。
蒲郡市では、蒲郡駅南約200メートルの海辺に位置する地区「みなとオアシスがまごおり」を会場に8年前から毎年、海に面した港町ならではのロケーションでジャズが楽しめる「SEA SIDE JAZZ FESTIVAL」が開かれている。港町にジャズという新たな観光価値を作ろうと、NPO法人「音魂ネット」が企画・運営するイベント。今年は9月21日に開催される。
「JAZZコンサートinナビテラス」は、多くの通勤、通学者らが利用する駅でのフェスティバルPRを兼ねた無料ライブ。昨年、第1回の企画にあたり、ジャズ事業のノウハウを持つBWJFに協力が求められた。
今年は、BWJFがフェスティバルに出演するミュージシャンの手配などにも携わっている。「ジャズ事業のノウハウが学べる」「『ジャズの街岡崎』を市外に発信できる」という双方のメリットが合致した形だ。
一夜明けた翌23日昼過ぎの「内田修ジャズコレクション展示室」(岡崎市図書館交流プラザ)。常設されている試聴機が開館後初めて一時撤去され、代わりに置かれた2台のスピーカー、真空管アンプ、レコードプレーヤーの前に、テーブルと椅子が並んだ。
騒音や保存上の理由から、通常はヘッドフォンでCDに録音された音源を聴くことしかできないレコード。それを実際に再生して聴く「ジャズ街サロン」と題した、市とBWJF主催の“サロンコンサート”だ。
「エマーシー」「マーキュリー」という通好みなレコードレーベルながら、「スタンダードなアルバム」として22枚を選んだのは、展示室ディレクターとBWJFのアドバイザーを兼任する山東正彦さん(75)。実物のレコードをスピーカーで聴いた愛好家からは「音が柔らかくて良いね」「音がしっとりしている」などと好評を得た。
山東さんは「レコードやテープは本来、実物を聴いてもらわないと意味がない。日本のジャズを学ぶ海外の学生が、この展示室の存在に驚いていた前例もある。内田修ジャズコレクションを軸とした『ジャズの街』としての事業経験をアウトプットし、広く知ってもらうことが大切」と力を込める。
「協議会の設立を機に、市内にとどまっていたアプローチを市外に向けることで、岡崎に足を運んでもらうきっかけを作りたい」と柴田さん。「ジャズという文化が市外から岡崎に人を呼び込む効果につながれば」と話している。