東海愛知新聞バックナンバー

 1月30日【木】

音楽療法で突発性難聴解消へ

生理研・岡本特任准教授ら研究発表

岡崎市明大寺町の自然科学研究機構生理学研究所の岡本秀彦特任准教授(耳鼻咽喉科医)らのグループは、急激に聴力が低下する突発性難聴の治療法として、聞こえにくくなった方の耳を積極的に活用すれば聴力回復に有効だ、と発表した。

■クラシック毎日6時間 耳栓、ヘッドホンつけて

原因不明の突発性難聴の国内患者の割合は1万人に3人と言われ、点滴による薬物療法が一般的。研究では、発症した方の耳を刺激することで脳活動を活発化し、機能を回復させることに成功した。

研究グループは、突発性難聴を発症した20〜60代の男女22人に入院期間中(7〜10日間)、薬物療法を行いながら、正常な耳に耳栓、難聴の耳にヘッドホンをして毎日6時間、クラシック音楽をかけた。

退院時に左右の聴力差を計測すると、薬物療法だけの患者(31人)よりも音楽療法を加えた患者の方が、聴力が回復していた。音楽療法の場合は完全回復86%、一部回復14%、薬物療法のみは完全回復58%、一部回復19%だった。

これは、耳の上部にある側頭葉の聴覚野という脳の部分の活動が活発になった結果という。脳は片方の耳が難聴になった場合、正常な耳から入る情報を共有しようとし、難聴の耳から入る情報を受け付けなくなる「脳の左右差」が発生する。今回は音楽療法によって、その差が改善された。

岡本准教授は「突発性難聴は、これまでは静かに過ごすことが推奨されてきたが、むしろ聞こえにくくなった耳を積極的に使うことが有効なリハビリ方法と示すことができた。音楽療法だけなら患者の負担が軽くなり、副作用の問題もない」と話した。

研究結果は英科学誌「サイエンティフィック・リポート誌」電子版に掲載されている。(竹内雅紀)