岡崎市明大寺町の自然科学研究機構生理学研究所の望月秀紀特任助教と柿木隆介教授(ともに神経生理学)はこのほど、かゆい場所をかくと快感を生じる脳内メカニズムを解明した。「報酬系」と呼ばれる部位の活動を抑制することで、アトピー性皮膚炎の治療法の開発にもつながる可能性があるという。
望月特任助教らは、20、30代の男女16人の手首に電気刺激を与えてかゆみを誘発。つめに見立てた銅製の器具で手首と、手首から離れた皮膚をかいた場合の脳活動を磁気共鳴断層画像装置(fMRI)で測定した。その結果、手首をかいた場合は全員が「気持ちいい」。手首から離れた場合、気持ちよさはなかった。「気持ちいい」と感じたときは、「報酬系」の中脳や大脳基底核の綿条体の活動が増加した。「報酬系」はギャンブルで大金が当たった時や人に褒められた時などにも活発化する。かゆい時は快楽を得ようとしてかいてしまい、結果的にかゆみを増幅させるという悪循環になっている。
かゆみの感覚をなくす研究と、かくことで快感を得る働きを抑える手法を合わせることが皮膚の病気を治すのに効果的だとしている。
研究成果は米国の神経生理学雑誌「ジャーナル・オブ・ニューロフィジロジー」電子版に掲載されている。(竹内雅紀)