農作物を荒らすイノシシ、シカの肉をおいしい食材の1つとして普及させようと、県内で「愛知産ジビエ・グルメ・スタンプラリー」が7日から始まった。県がNPO法人ボランタリーネイバーズ(本部名古屋市東区、大西光夫理事長)に委託。岡崎市内の6店舗を含む46店舗が参加している。(大津一夫)
ジビエは、フランス語で食材として捕獲された野生の鳥獣、もしくはその肉のこと。「愛知産ジビエ」は、食肉処理の食品営業許可を受けた処理場で処理されたものを指す。
平成23年度実績で、県内ではイノシシ約6200頭、シカ1700頭が捕獲されている。このうち1部が処理場で食肉用に加工され、販売される。
スタンプラリーは、「愛知産ジビエ」の魅力を発信しようと昨年から始まった。参加店舗を回ってスタンプを押してもらい、3店舗で1回の抽選権が得られる。スタンプの台紙は各参加店舗で配布している。昨年は22店舗が参加し、90件の応募があった。
期間は来年2月9日までで、最終日には豊田市足助交流館で「ゴールインイベント」が開かれ、抽選で参加店から提供される食事券などが当たる。46店舗すべてを回ると「全店制覇賞」が贈られる。
問い合わせはボランタリーネイバーズ(052―979―6710)へ。
岡崎市内の参加店舗は次の通り。
県内に2カ所ある解体場の1つ、岡崎市夏山町のNPO法人中部猟踊会(日浅一理事長)の「額田山小屋」を訪ねた。
中部猟踊会は猟師らで平成17年に結成。日浅さん(67)の夏山町の敷地内に解体場や冷凍庫を設置した。別名「三州マタギ屋」とも呼ぶ。
同施設には年間300頭のイノシシ、シカなどが持ち込まれる。このうち8割がイノシシという。
持ち込まれたイノシシなどは表面の汚れを洗い落とし、内臓を出してから解体。真空パックに詰めて冷凍保存し、要望に応じて出荷する。
日浅さんは「捕獲されたイノシシやシカは大切な資源。地元で獲れた“食材”は地元で消費するのが原則」と、道の駅「藤川宿」で販売する予定のソーセージ、フランクフルトの商品化を目指す。
日浅さんが最近感じていることがある。野生のイノシシは本来、春に子どもを産む。しかし害獣駆除で春に産まれたばかりのイノシシまで捕獲するため、秋にも出産するイノシシが増えたことだ。
「畑などを荒らすイノシシなどを有効利用するのは悪いことではない」としながらも、「人間と野生動物が共存できる体制づくりが必要。自然の中の個体数の目標を定めることもその1つ。人間の都合による駆除だけでなく、大きな自然の中でバランスも考えて」と訴える。