愛知産業大学4号館1階ホールで、学生らが「森の雫」をテーマにした展示空間を制作している。プロの左官や大工の指導を受けながら、このほど目玉である高さ3メートル、幅2.5メートルの日干しれんがの壁を完成させた。(大山智也)
大学院造形研究科、宇野勇治准教授(43)の講義の一環で、学生15人が受講。外部講師として「現代の名工」左官の松木憲司さん(49)=三重県四日市市、愛知万博で「サツキとメイの家」を造った棟梁(とうりょう)・中村武司さん(48)=東郷町=が協力している。
造形学部建築学科では、これまで伝統木工技術を利用した茶室造りなど、体験を通して学べるワークショップを実施。今回は左官技術について学ぶことを目的に、伝統工法による日干しれんがや土壁などを用いた展示空間の制作を企画した。
学生たちは壁の土台となる木枠を組む木工チームと、れんがを作る左官チームに分かれて4月から作業をスタート。左官チームは松木さんの指導のもと、大学構内の運動場から採取した土と、あらかじめ用意した消石灰を材料に、れんが作りに挑戦した。
土と消石灰の配合を変えて成型し、日干しれんがを試作。風合いや手触り、強度などを確かめた。強度不足で割れるなど、壁作りに使用できないものを含めて200個以上のれんがを作った。
6月に土台が完成すると木工チームと協力して、れんがの量産と並行しながら積み上げ作業を実施。長さ24センチのれんがを半分に割って積み上げた。
建築学科3年の川戸翔太さん(21)は「身の回りにあるただの土が、こんなふうに立派なれんがに変わることに驚いた。これからも全員で協力して作業に臨み、すばらしい展示空間を作り上げたい」と話した。
展示空間は日干しれんがの壁、土壁、枝木のスクリーンの3つで構成されており、窓側のスクリーンから差し込む光などを“雫”に見立てた。今年度中の完成を予定している。