岡崎市内で石工職人見習いとして修業を積む本翔平さん(22)がこのほど、ドイツで開かれた第42回技能五輪国際大会・石工の部で銀メダルを獲得した。出発前に“金メダル”を公言していた若手職人は「結果に悔いはない。支えてくれた周囲の皆さんに感謝したい。世界一の銀メダルだと思う」と語っている。(竹内雅紀)
鹿児島県阿久根市出身の本さんは地元の高校を卒業後、岡崎市内の石材問屋「小林秋三郎商店」に就職。今年3月まで岡崎技術工学院で3年間技能を磨いた。昨年秋の技能五輪全国大会で優勝し、22歳以下の石工職人の世界一を決める大会に駒を進めた。
国際大会には10人が参加。課題(デザイン)に沿って石灰岩を4日間で加工し、その正確さを競った。デザインは事前に予告されているが、本番では全体の3割程度が変更されて出題されるため、その場での応用力が求められる。「想定外の部分はあったが、精神的なダメージはなかった。むしろやってやろうという気持ちになった」と振り返る。凹凸部分の変更などは本さんにとっては追い風となった。
また、初日の開始30分で左の人差し指をカッターで切り、負傷するアクシデントもあったが、何とか競技を続行できた。「デザイン変更や、けがの具合など運が良かった。指の負傷で意外と冷静になれた」と話す。
金メダルはオーストリアの選手が獲得したが、ほかの国の2選手と並ぶ堂々の2位。岡崎市商工労政課によると、石工の部でのメダル獲得は平成19年以来6年ぶり、銀メダル獲得は昭和50(1945)年にまでさかのぼる。「相当うれしかった」と喜び、実家の母親にも伝えた。昨年他界した父の墓前でも報告した。
小林秋三郎商店の小林敬央社長(51)は「目標を強く持って挑む本君の長所が生きた大会だった。こういう若手職人はなかなかいない」と評価する。
帰国後は「捉われ過ぎて前進できないから」という理由で銀メダルは飾っていない。「会社へ少しでも恩返しができたらと思う。職人として、人間として成長したい」と述べ、一級石工職人が出場する技能グランプリ優勝を新たな目標に設定している。
本さんは来年8月まで同社で働き、その後は実家の石材店を継ぐ予定。