岡崎市城北中学校2年の山本由実菜さん(14)が、11日に行われた第38回東海パワーリフティング選手権大会女子52キロ級で、206.5キロの日本新記録を樹立した。小学2年から受け続けてきたいじめが原因で、現在は登校していない。「『どうだ。優勝してやった』という気持ちです。パワーリフティングで自信を持ちたい」と話している。(今井亮)
小さなきっかけだった。小学2年の時、教室内に落ちていた同級生の玩具のハンコを拾い上げただけで、いわれのない“泥棒”扱いが始まった。中学生になっても、いじめは続いた。
「死ね」「消えろ」「汚い」。身体的暴力はなかったが、上級生も加担するようになり、教室内で陰口をささやかれたり、廊下ですれ違いざまに暴言を吐き捨てられたりとエスカレートした。
部活のバレーボール部でも、レギュラーの可能性が見えてくると、「(顧問による)ひいきだ」と言われた。レギュラーになることなく退部し、今年9月から不登校になった。
運動不足を解消しようと、同市八帖北町のパワーリフティングジム「ちからこぶGYM」の門を叩いたのは約半年前。父親の知人だったオーナーの福田康宏さん(41)=三河電温サービス代表=やジムの練習生に温かく迎えられ、トレーニングに励んだ。
「緊張した」という選手権ではスクワット(65.5キロ)、ベンチプレス(50.5キロ)、デッドリフトの「ちからこぶGYM」(90.5キロ)の種目別と、3種目のトータルで日本記録を更新した。
山本さんは「3年後にパワーリフティングが正式種目になる国体を目指したい」。同時に「気持ちが落ち着いたら、親に登校する意志を伝えたい」とも。
福田さんは「記録の重圧に負けず、本番で力を出す強さを持っている」と、山本さんの素質を評価。いじめられた経験からパワーリフティングを始めた過去を持つ福田さんは「社会貢献の意味でも、心の問題を抱える子どもを受け入れたい。パワーリフティングが立ち直るきっかけになってほしいですね」と話した。