東海愛知新聞バックナンバー

 12月10日【木】

荻太郎さん「追悼展」

洋画代表作など50点
夫は「世界は不平等」と言った
岡崎市葵丘

9月2日に94歳で他界した三州岡崎葵市民の洋画家・荻太郎さんの「追悼展」が、岡崎市明大寺町の葵丘で開かれている。人間や自然を、愛情を込めて描いた約50点が並び、市民らが作品を鑑賞しながら荻さんの人柄をしのんでいる。20日まで。

荻さんは北設楽郡稲武町(現在の豊田市)で生まれ、間もなく岡崎市内に転居。旧制岡崎中学校(現県立岡崎高校)を卒業し、上京。東京美術学校(東京芸術大学)油画科を卒業した。

昭和20(1945)年、広島の原爆で親友・手島守之輔さんを失ったことが、その後の絵画制作の原点になった。

大作「神おわし給ふや」は、画面の周囲に沈思する人間の顔が並ぶ。「歴史(赤)」は、題名の通り強烈な赤色が印象的な作品。

会場には、今年9月16日から28日まで東京の国立新美術館で開かれた新制作展に向けて、荻さんが事前に書いた「21世紀は平和な精神文明の時代でありたい」という署名入りメッセージも掲げられている。

会場を訪れた50歳代の女性は「どの作品からも、荻さんの人間に対する愛情を感じます」と話していた。

8日夜に開かれたオープニングレセプションには、東京都文京区在住の・嘉子夫人(89)も出席。「私が『神おわし給ふや』とは、どういう意味ですかと聞くと、『世界は不平等だ』と答えたのを記憶しています」と振り返り、「久しぶりに見る作品も多く、懐かしいです」と話していた。

小原建設グループは先代社長・小原守さんの時代から約60年にわたって荻さんを支援。同グループが運営する葵丘内に「ギャルリ・オギ」を開設し、荻さんの作品を常設展示している。


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