自然科学研究機構・基礎生物学研究所の長谷部光泰教授(37)=進化生物学=らのグループは、科学技術振興機構、金沢大学との共同研究で、コケの細胞発生を制御する「ポリコーム」と呼ばれる遺伝子を破壊すると、コケが約5億年前の地球で最初に上陸した「前維管束植物」にそっくりの形状になることを発見した。長谷部教授が10日、発表した。
長谷部教授は「現在あるシダやマツなどの植物の進化の過程を解明する糸口になる」と話し、陸上植物の祖先とされてきたコケは、前維管束植物が退化した姿とする仮説を高い確率で裏付けるという。
約4億年前の化石から、前維管束植物は海中から最初に上陸した植物類で、最も単純な形状だったと証明されている。
コケの化石は現在まで発見されておらず、枝分かれをするコケも存在しないため、これまではコケが枝分かれなどの進化を遂げて、前維管束植物が派生したとの仮説が有力だったが、コケは陸上植物の祖先ではない可能性が高まった。
管束は植物の茎の中心部にある柱状の細胞組織で、シダ植物や種子植物に見られ、コケ類などと区別される。