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東海愛知新聞

重症化を防ぐために

岡崎歯科医師会独自の障害者診療

岡崎歯科医師会(太田憲明会長)が毎週木曜、岡崎市中町の岡崎歯科総合センターで「障がい者歯科診療」と銘打って障害者限定の診療を行っている。同会が10年以上継続している独自事業。関係者は「自身で口の中の状況を説明できない方もいる。そうした方々の助けになれば」と障害者支援に力を入れる理由を話す。()

同会によると、岡崎げんき館北の同センターで「障がい者歯科診療」が始まったのは2009(平成21)年7月。多くの歯科医院が休診となる木曜午後2〜4時に完全予約制で実施している。センター内の診療台は横並びで3台あるが、現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のため中央の台を除いた両端2台を使用している。患者1人当たりの治療・口腔ケア時間は約30分。歯科医師19人と歯科衛生士13人が3グループに分かれて輪番制で診療に臨む。1日当たりの構成は歯科医師2人、歯科衛生士6人。診療中に動き回る患者に対応するためにも従事者をやや多めに設定している。

診療前は念入りに打ち合わせを行う。口腔状況以外に、障害の程度や診療時における注意点などを確認して共有する。患者は未就学児から高齢者まで幅広く、自閉症や発達障害、身体障害などさまざまだ。また、治療だけでなく、定期的な口腔清掃や状態確認などで訪れる人も。今では初診よりも定期健診などで継続して訪れる人が多く、年間で延べ約600人が利用しているという。

各歯科医院で全ての障害者の受け入れが可能というわけではない。そのため、同センターでの「障がい者歯科診療」は貴重な場だ。患者によって障害の程度や状態が異なるため、細心の注意を払わなければならない。特に初診時はしっかりと問診を行う。また、前回が精神的に安定していても、次回には機嫌を損ねて診療台にすら着くことができないケースもある。歯科衛生士らは患者の様子を見ながら適度に声を掛けていく。

患者が場所やスタッフに慣れてもらうための「トレーニング」を重視している。時には診療中に動いてしまう患者の体に布団などを巻いて固定することもあるが、数を数える間だけ歯科器具を口の中に入れたり、イラストを見せて今後の流れを表示して精神的に落ち着かせたりするなどの工夫を凝らす。ほかには、リラックスできる音楽を聴いてもらったり、普段から持ち歩いている物を持ったまま診療台に着いてもらったりといったさまざまな手法を駆使する。「トレーニング」は患者が最寄りの歯科医院に通うようになった際にも役立つという。また、付き添いの家族や介助者への助言も大事になるという。

診療担当の歯科医師は「1人の患者に対し、歯科衛生士も含めて大勢で取り組むが、そのうちの1人は冷静な判断をしなくてはいけない。例えば、患者の体を固定することに全員が懸命になると、異変などを見落としやすくなる。そういうことがないよう気を付けている」と実情を話す。「新型コロナの感染拡大によりマスク生活が続くと、口の中が渇くことが多くなり、衛生面でのケアも必要になる」

開設時から携わる同会理事(障がい者歯科担当)の鍋田伸郎歯科医師(51)は「口の健康(=健口)管理は大事。幼いころからしっかりとした口腔ケアが必要であり、特に自分の意思を伝えるのが不得意な方たちには、症状が悪化する前にしっかりと対応することが重要と考える。今後は診療時間の増加や治療法の拡張、人員増員、設備投資、岡崎市内および幸田町内の各歯科医院や行政との連携などを視野に入れて動いていきたい」と意欲的に語る。

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