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東海愛知新聞

近代化遺産保存の意義

旧本多忠次邸開館から10周年

岡崎藩主を務めた本多家の末裔(まつえい)である故本多忠次(1896〜1999年)の邸宅と壁泉の一部が、岡崎市東公園に移設され「旧本多忠次邸」としてオープンしてから今年で10周年を迎える。所管の同市教育委員会社会教育課は「10周年の今年はさまざまな記念企画に取り組みたい」としている。(

旧本多忠次邸は1932(昭和7)年に東京都世田谷区に建造。当時としては珍しい洋風建築と和風建築双方の特色を取り入れた意匠の建物だった。老朽化を理由に忠次の死後解体される予定だったが、学識経験者らに再評価されて復元移築されることになり、本多家ゆかりの地である岡崎市が移築先として選ばれた。

同所は一部鉄骨を使った木造2階建てで延べ床面積は522平方メートル。庭には壁泉付きのプールが一部移設されている。2012(平成24)年7月6日に開館。12年度は3万3712人が来場した。来場者数は、14年度以降は1年当たり1万1000〜1万2000人程度という。20年度は改修工事や新型コロナウイルス感染拡大防止のための緊急事態宣言発令などによる休館もあったが、21年12月時点の累計来場者数は約14万8000人という。

これまでに華道家の假屋崎省吾さんの企画展や、食器や文房具を主体にした西洋磁器やガラス製品など、邸宅という特色を生かした企画展が複数回行われている。21年10月には同所の壁面に映像作品を投影する「プロジェクションマッピング」のイベントも行われ、新たな活用法の模索も進む。

同所は

  1. 外観や設備が変わっていない
  2. 根拠となる資料が豊富に残る
  3. 家具やステンドグラスなども残っている
  4. 生活していた家族がいる

―という近代(明治時代から昭和初期の第2次世界大戦前ごろまでの時代)の文化財保存に有用な条件がそろう非常に珍しい施設。市も後世に残すべき貴重な遺産として保存に取り組む。

建造物を含む近代の遺産は、ほかの時代と比べて歴史が浅いことで軽視されやすい傾向にあることや戦争による損壊などで現存数は少ない。旧本多忠次邸の担当者は「旧本多忠次邸を通じて、近代化遺産を保存する意義も紹介していきたい」としている。

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