東海愛知新聞バックナンバー

 3月15日【火】

障害乗り越え卒業

愛産大の中村さん 難聴者らへの取材を映像化

重度の聴覚障害がある幸田町の中村美香さんが19日、岡崎市岡町の愛知産業大学造形学部デザイン学科を卒業する。これまで同大では聴覚障害者が2人卒業しているが、重度の障害がある学生が卒業するのは初めてという。(横田沙貴)

中村さんは、先天性の感音性難聴。聾学校小学部在学時に幸田町へ移り住んだ。イラストレーターの仕事に興味があり、同校の高等部を卒業後、愛産大へ進学。絵画実習を受けた際に自分の絵画の実力に不安を覚え、映像制作を専門とする宇井朗浩教授のゼミに参加したことをきっかけに映像制作に興味を持った。また、大学入学後から通っている同町の手話サークルで「手話の勉強は書籍よりも映像で見るほうが分かりやすい」という意見を聞き、「映像による手話辞典」を思い立ち、映像制作への関心が高まった。

在学中は、聴覚障害者の抱える問題を提示する映像作品を作った。卒業制作では、同町聴覚障害者連絡協議会などに協力してもらい、インタビュー映像を撮影。その際に、双子の妹の美喜さんに聞き手をしてもらったり、愛産大の教員らに吹き替えをしてもらったりした。

講義では教員の口の動きと板書に注目して内容を覚えた。3年生の時に同大へパソコンテーク(パソコンを使った要約筆記)が導入され、友人らの協力で勉学に励むことができた。だが、「グループ制作では話し合いに参加できず、自分の意見を伝えられない悔しさと諦めの気持ちでぼーっと時間だけが過ぎていくのを待つしかなかったのが苦痛だった」と、当時を振り返る。

卒業後は地元での就職が決まっている。「(卒業できたのは)たくさんの人の協力のおかげ。家族や友人、親戚、恩師、大学の皆さん、地元の皆さんへの感謝でいっぱい。卒業後は、町内に住む『きこえない人』たちの暮らしをより良くしていきたい」と意気込んでいる。