東海愛知新聞バックナンバー

 8月28日【木】

災害 風化させない

岡崎市 8月末豪雨から6年

1時間当たりの雨量が146.5ミリを記録し、2人が死亡した岡崎市の平成20年8月末豪雨から明日でちょうど6年。カレンダー上の曜日の並びが当時と同じ今年は、全国各地で大雨による災害が多発している。9月1日の「防災の日」を前に、岡崎市の現状を取材した。(竹内雅紀)

これまでに経験がないような猛烈な雨が降ったのは20年8月29日午前1時からの1時間。前日昼に大雨洪水警報や土砂災害警戒情報が発表され、市内一部に避難勧告を出したが、午後9時前までに落ち着き、いったんは警報や避難勧告を解除した後の出来事だった。

29日午前0時すぎには再び大雨洪水警報が発表され、1時30分に土砂災害警戒情報。岡崎市が全市に避難勧告を出したのは午前2時10分だった。同市防災危機管理課の河合則夫課長は「避難勧告発令の判断材料は土砂災害警戒情報。ただし、エリアの特定はなかなか難しい」と言う。

■特別警戒区域は311カ所

広島市北部では今月20日、豪雨に伴う大規模な土砂災害が発生した。被害が大きかった地域は花崗岩が風化した地質「真砂土」が多く、大量の水を含むと崩れやすいと言われている。

岡崎市の防災マップを見ると、花崗岩地質の地域は市の北東部に多く、一部で南部にも分布している。「花崗岩の風化がどの程度かを調べる必要がある。昨年10月の伊豆大島の土石流災害を機に県が予算を増やして、特別警戒区域などの指定をするための調査をしている」と河合課長。

現在、市内の土砂災害危険箇所は1186カ所、警戒区域は350カ所、特別警戒区域は311カ所が指定されている。花崗岩地質は地震には頑丈だとされていたが、土砂災害に対してもろい面があることが広島の豪雨で露呈した。土砂災害用の手作りマップの作成は今後の検討課題になりそうだ。

■土砂災害にも警戒を

岡崎市内では6年前の豪雨を受けて、翌年の21年から各地域で総合防災訓練を行うように切り替えた。今年は8月31日に21カ所で開かれ、周辺が花崗岩地質の常磐東小学校では児童が周辺の災害特性(土砂災害)について調べた結果を発表する。

岡崎市消防本部に昨年3月、総務省消防庁から無償貸与された全地形対応車両は今回の広島の件でも出動要請はない。災害現場のあらゆる地形でも走行可能な全国に1台しかない特殊車両だが、消防庁長官の指示がない限りは出動できない。「準備はいつでもできている」(同本部)と配備後の初出動に向けて心構えは怠らない。

■伊賀川河川改修 今年度末で完了

8月末豪雨以降、被害の大きかった伊賀川をはじめ5つの河川が床上浸水対策特別緊急事業として改修工事が行われ、伊賀川は予定より1年延びて今年度末に完了する。

隣人を豪雨で亡くした愛宕学区総代会長の彦坂圭佑さん(78)は「風化させてはいけない。広島の件でもそうだが、自然は恐ろしい。自分の身は自分で守るように心掛けることが大事」と主張し、河川改修によって一時的に少なくなった桜の木の植樹を心待ちにする。

■地域別ハザードマップ作り進む

岡崎市内555町内会のうち、地域ごとのハザードマップ作りに323町が取り組んでいる。河合課長は「行政ではきめ細かい部分までフォローできないこともある。地域のことは地域の人が一番よく知っている。地域に合った危険回避、安全確保をお願いしたい」と話す。