女性議員が2人に
衆院選振り返り 本紙関係分の3選挙区
27日に投開票された第50回衆議院議員総選挙は翌28日に全議席が確定した。本紙関係分の3選挙区では、比例復活も含めて4人が当選。自民党前職が2人落選し、国民民主党と立憲民主党の新人女性が2人当選し、顔ぶれが大きく変わった。新政権発足から26日後の投開票という異例の短期決戦を振り返る。(衆院選取材班)
重徳氏の強さ 愛知12区
愛知12区(岡崎・西尾市)は実質、前職同士の勝負となり、立憲民主党の重徳和彦氏(53)が自民党の青山周平氏(47)に4万票以上の大差をつけて完勝した。2012(平成24)年は青山氏が勝ったが、14年以降は重徳氏が4連勝。比例重複立候補がなかった青山氏は17年以来の落選となり、自民は7年ぶりに議席を失った。
勝ち方にこだわる
9月の立民代表選後の新体制で政調会長に就任した重徳氏。党県連代表も務めており、陣営は「圧倒的な勝利が必要」と勝ち方にこだわった。
選挙戦序盤から優勢が伝えられ、気の緩みを警戒した。電話作戦でも「重徳さんは大丈夫でしょ?」などの声が多くあった。選対幹部は「野党共闘の形になった前回は“立共”(立民と共産を合わせた造語)への拒否反応があり、失った票もあった。そういう意味では今回は戦いやすかった」と明かした。
不安材料は重徳氏が党務による他選挙区応援で愛知12区を不在にすること。重徳氏も「自分の選挙区を離れることに不安がある」とつぶやいた。三重、静岡、神奈川、茨城県には行ったが、思いのほか少なかった。
重徳氏の強みは10年以上にわたる地元での地道な活動、露出度の高さ、街頭での受けの良さなどだ。決起集会で選対幹部が「どの党にいようと、重徳和彦を支える」と発言したように、過去4回は日本維新の会、維新の党、無所属、立憲民主党で立候補。今回初めて前回と同名の所属先での立候補だった。党名が異なっても当選を重ねることができるのは、重徳氏個人の人気と言えよう。
6日の岡崎市議選では自らが率いる政治団体「チャレンジ岡崎」が議席を減らした。選対幹部は「市議選は候補者個々の地元の根付き具合。衆院選は重徳本人の人気が直接票に結びつく。影響はない」と断言した。
重徳氏は「政権与党になるための強い野党」として立民を選んだ。保守中道路線の野田佳彦代表の体制が続けば政調会長以上の要職も予想される。「選挙区を空けることが今後増えるかも。そのためにも盤石な体制を築かないといけない」と陣営。4連勝で強固な地盤が出来上がったという見方もできる。
厳しい審判下る
今回は「政治とカネの問題」が争点の一つになり、政治資金収支報告書に不記載があった青山氏には厳しい審判が下された。街頭演説でもおわびの言葉を入れた。その後に経済政策などを訴えたが、反応は冷ややか。支援者は「政策を聞いてもらえない」と不満を漏らした。
17年に重徳氏に4万5000票差をつけられ、落選した青山氏。前回から街頭演説中心の選挙活動を行い、1万4000票差に迫った。今回は逆風の中、差を詰めるにはどうしたらいいか。選挙前や期間中に尋ねたが、明確な回答はなかった。「逆に教えてほしいぐらいだ」と吐露する選対幹部も。石破茂首相も応援に入ったが、結果は実らなかった。
6日の岡崎市長選では推薦した内田康宏氏(71)が当選し、勢いづいたように見えた自民。しかし、国政選挙は違った。支持者は「12区から与党議員が再びいなくなった」と落胆する。
青山氏は今後の去就について「(支援者への)おわびやお礼回り後に、しっかりと考えていきたい」と述べた。同じ相手に4連敗となると、候補者変更の可能性も十分に考えられる。
風吹かずに終わる
重徳、青山両陣営が当初注視した日本維新の会新人の中川博登氏(46)。序盤で思うような活動が展開できずにつまずき、支持は広がらなかった。大阪で人気の維新だが、この地域では風は吹かなかった。6日の岡崎市議選でも公認した3人全員が落選。中川氏は衆院選後に「政権交代が掲げられ、二者択一の選挙になった。陣営、党として割って入るほどの実力はなかった」と振り返った。
共産党は比例東海ブロック2議席を目指して、急いで候補者を擁立したが、目標達成ならず。「反自民、反裏金の票が立民に行った」と悔やんだ。
労組の地力 愛知11区
愛知11区(豊田・みよし市)は、国民民主党新人の丹野みどり氏(51)が自民党前職の八木哲也氏(77)らを破り、初当選した。
名古屋市出身の丹野氏は、2年前の参院選(岐阜県選挙区)に落選後、衆院選では愛知11区から挑戦すると表明した。勝負の鍵は労働組合の票だった。
17年までトヨタ労組の組織内候補が連勝してきた「旧民主党の牙城」。前回は選挙前に古本伸一郎氏=現愛知県副知事=が立候補を取りやめ、八木氏が選挙区初勝利を収めた。
丹野氏は連合愛知や全トヨタ労連の推薦を受けて選挙に臨んだ。票の結果は12、14、17年の古本氏と八木氏と同じ構図。労組が組織内候補ではない丹野氏をしっかり支援したと言える。
八木氏は旧石破派の所属で石破首相の応援も得たが及ばず。09年以来15年ぶりに自民の衆院議員が不在となった。年齢等を考慮すれば、自民は次期衆院選を別の候補者で戦うことが濃厚だ。
今年2月の豊田市長選では自民系と労組系が対立した。昨年4月の市議選ではトヨタ労組出身の現職が落選するなど、ここ数年で“地殻変動”が起きている11区の大票田。しばらくは目が離せない。
大臣への期待も 愛知14区
愛知14区(豊川・蒲郡・新城市、幸田・設楽・東栄町、豊根村)では自民党前職の今枝宗一郎氏(40)が安定した戦いぶりで5連勝を飾った。投開票日当日に妻(44)が急死したため、万歳三唱はせず、支援者らへのお礼にとどめた。支援者からは「そろそろ大臣も」との期待がかかる。
立憲民主党の大嶽理恵氏(47)は比例復活。同区での比例復活は14年の鈴木克昌氏(当時民主党)以来で大嶽氏は鈴木氏の秘書経験がある。