岡崎市長選告示まで60日
現職いまだ明言せず
岡崎市長選挙(10月6日投開票)の告示(9月29日)まであと60日。市のかじ取り役を決める選挙には、昨年のうちに3人が立候補を表明したが、現職の中根康浩氏(61)は今年7月30日までに進退の明言を避けている。約2カ月前の時点での現職の「態度保留」は岡崎では珍しい。8月2日には立候補予定者説明会が開かれ、有権者の関心も徐々に高まってくる。中根氏の正式な表明はいつなのか―。(竹内雅紀)
選挙への出馬、不出馬の表明時期に決まったルールはないが、表明が遅いと出馬する場合は周知や準備の期間が短くなり、不利とされる。露出度が高い現職は、他の候補者の様子を見ながら、主に議会で表明することが多い。挑戦者の新人や元職は記者会見を開いて表明し、早めに準備というのが定番だ。
過去3回の例
過去3回(2012、16、20年)の岡崎市長選の現職の表明時期を見る。いずれも投開票は10月で現職は市議会で言及した。12年の柴田紘一氏は6月定例会初日の提案説明と一般質問で4選不出馬、16年の内田康宏氏は3月定例会代表質問で再選出馬、20年の内田氏は前年(19年)12月定例会一般質問で3選出馬をそれぞれ明言した。新人だった中根氏は前回、20年1月に記者会見を開いて立候補の意思を示した。
議会で質問出ず
昨年12月、今年3、6月の定例会で中根氏の意思表示はなかった。議員からの“直球質問”もなかった。複数の議員によると、次期市長選への意向を問えば、その議員または議員の所属会派が「現職支持」を意味するという共通認識があるという。ある議員は「市長に進退を聞いて『出馬する』と答えたら、公約などの具体的な政策を詳しく聞かないといけなくなる。そうなると『あなた(あなたたち)は現職を応援、支持するんだね』と受け取られる」と解説する。行政のチェック側が時には援護射撃側に回るということだ。確かに過去3回の現職への質問は支持者でもあった保守系議員が行っていた。
今回、誰も質問しないということは、各会派が中根氏不支持という表れだろうか。各会派や無所属議員に聞くと「(進退のことは)聞かない」「(進退に関する)質問はしない」という回答ばかりだった。ただし、中根氏には多くの議員や会派の支持がなくても勝った4年前の実績がある。
支援者の前で
この状況であれば8月21日開会予定とされる9月定例会も期待できない。初日の提案説明などで市長自ら表明できるが、中根氏は7月16日の定例記者会見で「決定的なことは言えないが、もともと完全無党派・完全無所属という立場でやっている。議会での表明よりも市民の皆さま、支援者宛てに自分の気持ちを伝える方が誠実な姿勢だと思う」と述べ、自身の市政報告会(8月22日)での表明を示唆した。
複数の関係者によると、中根氏は再選出馬に意欲的という。各種団体の会合に積極的に参加したり、「とにかく」の文字が目立つポスターを新調したりしている。自身のホームページでは公約の達成状況を示しており、未達成の5万円給付と女性副市長登用は「×」ではなく「△」になっている。
引き延ばす理由
では、なぜ中根氏がここまで引き延ばすのか。多くの関係者が口をそろえるのは、前回の目玉公約・5万円給付の未達成の指摘だ。出馬表明すれば蒸し返される。その期間が長いほど不利になるため、様子をうかがっているというのが見方だ。7月の記者会見では「まだ決めていないが、自身や事務所、後援会に対して『引き続き市長職を担ってほしい、2期目に向けて挑戦してほしい』という声が寄せられており、後援会や支援者と相談している。時期が時期なので市政報告会の際には最終的な結論を支援者に伝えられるように協議、検討していきたい」と、前向きとも取れる発言をしている。
他市町の時期
岡崎に限らず現職の出馬表明時期は近年遅めだ。本紙エリアでは、今年2月の豊田市長選で4選した太田稔彦氏は、告示約1カ月前の昨年12月下旬だった。市議会12月定例会で言うつもりだったが「議員が誰も聞いてくれず、表明する場がなかった」として閉会後に臨時記者会見を開いて意思表示した。2年前の幸田町長選で再選した成瀬敦氏は、選挙(5月)3カ月前の2月に記者団の前で出馬を明言した。
今後の政治日程
8月は、2日に説明会が開かれ、中根氏が市政報告会を開く22日には一般社団法人岡崎青年会議所(岡崎JC)が岡崎市長選の公開討論会を予定している。市議会9月定例会も始まり、定例記者会見もある。中根氏がどこで態度を明らかにするのか注目だ。
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同市長選には、昨年9月に会社員岩瀬博昭氏(54)、投開票日1年前の同年10月6日に返り咲きを狙う内田氏(71)と元市職員の晝田浩一郎氏(36)が出馬を表明した。なお、岩瀬氏は本紙の取材に対し、市長選不出馬を明言している。