演目ゆかりの場所訪問
岡崎 歌舞伎俳優・市川青虎さん 無量寺に
9月14、15の両日に岡崎市民会館で行われる「岡崎歌舞伎公演」(市・一般社団法人岡崎パブリックサービス主催)に出演する歌舞伎俳優の市川青虎さん(40)が6月2日、出演演目「旅噂岡崎猫」の舞台となった同市羽栗町の無量寺を訪れた。青虎さんが演じるのは、寺に住み着く化け猫の役。寺では台本さながらの空気感を感じつつ、本番に向けて意欲を高めた。 (犬塚誠)
「旅噂岡崎猫」は無量寺で生活する、老婆に化けた猫の怪を主人公とした怪談話。宿を求めてやってきた親子との掛け合いの中で、次第に“本性”を現していく―というストーリーだ。初演は1827(文政10)年。1981(昭和56)年に、3代目市川猿之助(後の2代目猿翁)さんが現代風にアレンジして復活させた。娯楽性の高さも特徴で、劇中にはアクロバティックな動きなども取り入れられている。
この日は普段無住となっている寺が、関係者の協力で特別に公開された。青虎さんは門前に立つなり「さぞ夜は不気味だろう」と感嘆。荒廃が進んだ本堂や庫裏などをくまなく見て回った。関係者からは修行僧が多くいた往時の様子などを聞き取った。
今回の訪問は、青虎さんたっての希望から実現した。歌舞伎好きだった少年時代、心を動かされたのが「旅噂岡崎猫」。以来、何度となく公演を鑑賞し、今度は自身が主演を務めることになった。「自分が30年たってこの役を、しかも岡崎でできるというのはすごいこと」と思いを語る。
小学6年で踏んだ初舞台では日吉丸(後の豊臣秀吉)を演じた。矢作橋での蜂須賀小六との出会いの場面でキャリアをスタートさせたこともあり、岡崎とのゆかりも感じている。
「無量寺を訪れ、これまでの繁栄や人々の息吹といった『地の香り』を感じられた。『岡崎無量寺の場』は多くの方に愛されてきた作品。ご当地岡崎の方には、テーマパークのアトラクションに乗るような感覚で見てもらえれば」