事務所が違法状態
中根市長 陳謝し、解体撤去の意向示す
岡崎市の中根康浩市長(60)の政治団体事務所が都市計画法、建築基準法上の違法建築状態になっていることが16日までに明らかになった。中根市長は同日、市役所で記者会見を開き「長年知らずに使っていたが、勉強不足であったことおわび申し上げる。また、指摘を受けてから解体撤去、移転に時間がかかっていることにおわび申し上げるし、道義的責任を感じている」と陳謝し、該当事務所を解体撤去する意向を示した。(横田沙貴)
違法性を指摘されたのは、同市滝町の「中根やすひろを育てる会」事務所。中根市長によると父・薫氏が所有していた土地に立っていたプレハブ工法の建物数棟。建設時期は不明だが、「少なくとも父の市議選時代にはあった」といい、2008(平成20)年ごろから中根市長も利用。衆議院議員時代は旧民主党愛知県支部事務所にもなっていた。20年の岡崎市長選では選挙事務所として使われた。
事務所がある土地は1970(昭和45)年に都市計画法で「市街化調整区域」に指定された地域。この区域では、原則建造物を新築できない。その地域の生活に必要な小規模の店舗や公益性の高い施設の新築、70年以前から建造物がある「既存宅地」内の増築などは認められているが、中根市長の事務所はいずれの条件にも当てはまらない。また、建物を造る際は自治体への申請が必要だが、申請も行われておらず、登記もされていなかった。
市建築指導課によると、20年の市長選を契機に事務所の存在を把握。同年末には副市長に報告、21年5月に口頭で行政指導を行った。その際、中根市長は是正に応じる姿勢を示し、今年2月22日には、事務所の建物を店舗などにして活用する方向での計画案も市に提出していたという。
中根市長は指摘を受けた後、複数の解体業者などと共に解体撤去か再活用か検討。解体撤去を選択したとしている。
土地自体は昨年中根市長に贈与されており、「市街化調整区域であるという認識はあったが、父より『開発許可を取っているので使っていい』と聞き、その言葉を信じていた」と釈明。その上で、昨年末で滝町の事務所の利用を取りやめ、今年1月1日からは元能見町に移転。滝町の事務所は「解体工事の業者との打ち合わせや事務所内の片付け等で必要最低限は使っている。計画書も提出し、事実上違法状態は解消したと考えている」と答えた。
だが、同課は「プレハブでも内部に人が入ることができるような状態で、届け出がなければ都市計画法上違法。また、建築確認申請が提出されていない時点で区域に関係なく違法」という見解を示している。
中根市長は、違法建築を取り締まる立場での長年の違反についても謝罪し、「議会に相談が必要だが、事実経過の説明や給与の返上などを検討している」と述べた。