「いい思い出ばかり」
岡崎ボクシングジムの中村さん 来月末で20年の歴史に幕
岡崎市緑丘2の岡崎ボクシングジムが来年1月末で約20年の歴史に幕を閉じる。主宰の中村靖雄さん(79)が自身の80歳を前にやめようと決断。「いい思い出ばかり。これからは指導より観戦を楽しみたい」としみじみ語る。(大津一夫)
中村さんは鹿児島県出身。中学卒業とともに集団就職で岡崎に移住。繊維会社で働きながら名鉄東岡崎駅周辺をエリアにする“やんちゃ集団”に参加し、「元気に遊んだ」。その元気さがボクシング関係者の目に留まり、当時の岡崎ボクシングジムに通うようになった。
ボクシングには全く興味がなかった中村さんだが、めきめき腕を上げて頭角を現し、その年の秋には県大会で準優勝を果たした。
翌年にはプロテストに合格。22歳のころには、バンタム級で全国2位にランクされた。
しかし、プロといっても会社勤めをしながら練習に励む毎日。職場での地位が上がって休むことが難しくなり、27歳で引退した。
その後もコーチなどもしていたが、「いつか自分でジムを開きたい」と考え、60歳の定年を前に退職。妻の順子さんら家族にも了解を得て2003(平成15)年5月、「中村ボクシングジム」を開設した。長女の恵里子さん、次女の友貴子さんも専属トレーナーとして活躍。その後、かつて所属した岡崎ボクシングジムの閉鎖に伴い、現在の名称に変更した。
中村さんは岡崎市ボクシング協会の会長も務めており、毎年、岡崎の桜まつりに合わせて、乙川河川敷で愛知県東西対抗ボクシング大会を開催。このイベントはプロへの登竜門として知られ、間近で本格的な試合が見られることで人気を集めている。
印象に残っているのは、高校生らの選手と国体やインターハイ(高校総体)で全国各地に行ったこと。この20年で約40人のプロを育てたが、ボクシングの試合は変わってきた。「かつてはファイター同士の打ち合いが魅力の1つだったが、今はあごに少しパンチが入っただけで止められてしまう。ダメージを少なくするため、グラブが大きくなった。健康管理が厳しくなった」
ジムに通う女性も増えた。健康づくりとストレス解消が目的という。
最近、ミットで若い人のパンチを受けているときなどに体力の衰えを感じるようになり、ジムの閉鎖を決めたという。
「しばらくのんびりしたい。これまでできなかった旅行もしてみたい」と微笑む。