盛り上がり欠く戦い
幸田 町長選、町議再選挙を振り返る
15日に投開票が行われた幸田町長選挙と町議会議員再選挙(被選挙数1)。町長選では現職が、町議再選挙では新人がそれぞれ当選したが、投票率は42.68%と同町の町政選挙では過去最低を記録した。同町にとって久々の“身近な選挙”となるはずだった今回の選挙戦は、盛り上がりに欠ける形で幕を閉じた。(犬塚誠)
町長選では、2期目を目指す成瀬敦氏(65)が、ともに新人で無所属の滝沢のぼる(64)、諸派の須澤秀人(68)両氏を破って再選。成瀬氏は得票率88.3%の圧勝だった。
当初、町長選は、2月に出馬を表明していた成瀬氏が無投票で再選する可能性が高いとみられていた。しかし、5月2日に須澤氏、4日に滝沢氏が相次いで出馬を表明したことで状況が1変。1974(昭和49)年以来48年ぶりとなる3つどもえとなった。
成瀬氏は1期4年間の実績と組織力を武器に運動を展開。現職国会議員や町議らも応援に入って盤石の戦いぶりを見せた。陣営関係者も相手候補2人を“透明人間”と表現。「信任をいかに多く得られるかだ」と述べ、実質的な「信任投票」との見方を示していた。成瀬氏支持の男性は「本来やらなくてもいい選挙」と言い切った。
一方、新人2人は急きょ出馬を決めたこともあり、準備不足が露呈した。町議再選挙からくら替えした滝沢氏は、街宣や街頭演説などに力を入れたが、陣営は滝沢氏本人を入れて3人。個人演説会なども行わなかったため、公約の浸透を図ることができなかった。
須澤氏は告示日当日の10日まで50万円の供託金が集まらず、金策に奔走。立候補届け出締め切り約10分前に手続きを完了させたが、運動は当初から停滞した。ポスターを町内の全掲示板(72カ所)に張り終えたのは投開票日前日の14日で、町民会館さくらホール(定員1004人)を使った個人演説会でも聴衆は1人(本紙取材時)だった。「マスク義務禁止条例制定」などの政策が世論とかい離していたことも敗因とみられる。
なお、滝沢、須澤両氏の獲得票数は有効投票総数の10分の1に満たなかったため、供託金は没収された。
多かった無効票 白紙が1500票
新人4人が立候補した町議再選挙では、岩本知帆氏(39)が次点の柴田昌典氏(41)と14票差の僅差で初当選を果たした。
岩本氏は母親や助産師といった面をポスターでアピール。目立った運動は行わなかったが、地元の母親らから支持を集めた。柴田氏は個人演説会や辻立ちといった“正統派”の運動を展開し、一定の支持を集めたが、惜敗した。無効票も2063票あり、うち1500票は白紙だった。また、同町出身でない立候補者が土地勘のある立候補者に掲示板の位置を聞く場面もあったという。
今回の町議再選挙は、2019年4月21日に行われた前回の町議選(定数16に対して全立候補者15人が無投票当選)で生じた1人の不足を補うために実施された。足立初雄議長(74)は「今回、4人の若い方に出ていただき、ありがたかった」と述べた上で、「町議会ではこれまでFT(フリートーキングタイム)を月に1回やっている中で消防団や子ども会、区長と話し合いをし、年4回発行の『議会だより』に紹介してきた。(来年の町議選に向けて)議会改革と(議員の)なり手不足を中心に話し合っていきたい」と語った。