岡崎のアロー 93年の歴史に幕
公設ルーツの店舗が市内から消滅
岡崎市中町の「ショッピングセンターアロー」が28日、93年の歴史に幕を閉じる。伝馬(同市伝馬通1、1920=大正9〜2007=平成19=年)、元能見(同市元能見町、1926〜2012年)に続く市内3番目の公設市場としてスタートしたアロー。今回の閉店により、公設をルーツとする店舗は市内から姿を消すことになる。 (犬塚 誠)
アローは、1928(昭和3)年7月1日、同市の市制記念日に「中町公設市場」として誕生した。初めは市の管轄下で営業しており、当時の様子を収めた写真では外壁と屋根の間の部分に市章が確認できる。太平洋戦争中も物資の少ない中で営業を続けていたが、59年の伊勢湾台風で建物が倒壊。再建後に市の管轄を離れて「ショッピングセンターアロー」と改称し、54年ほど前に現在の建物に建て替えられた。
公設時代から営業する乾物店の3代目・原田美奈子さん(74)によると、最盛期には27店舗が入居。当時は地下が食料品売り場で地上階が食品以外の店舗街となっており、「ここに来れば何でもそろった」と振り返る。夏には屋上の駐車場にやぐらを組んで盆踊りが行われ、正月の抽選会では店の外まで行列があふれるなど多くの人でにぎわった。また、伝馬、元能見の両公設と共同で歌手の森進一さんを招き、市民会館でコンサートを開催したこともあったという。
しかしながら、近年は商店主の体調不良や高齢化、後継者不足などで店舗数が5店舗に減少。近隣への大型スーパーの出店で客足が遠のいていたことなどもあり、半年ほど前に5店舗の代表者で話し合って閉店を決めた。原田さんは「親不孝だと思うが、これも時代の流れ。頑張ってやっていたのだけれど…」と唇をかみしめ、52年来の常連という両町の野村美枝子さん(80)も「寂しいし、買い物先がなくなって困る」と肩を落とす。
さまざまな苦難に遭いながらも昭和、平成、令和の3時代を生き抜いてきたアロー。原田さんは「今まで長い間、足を運んでくれたお客様にはとても感謝している。最後まで一生懸命営業していきたい」と万感の思いを込めている。
午前9時30分〜午後6時30分。水曜定休。