「周辺への影響あり」
衆院選 トヨタ労組の意向受け
トヨタ自動車労働組合が14日に衆院選の小選挙区に組織内候補を擁立しないことを発表したことで、周辺の選挙区で波紋が広がっている。公示が19日に迫る中で「影響は少なからずある」「いろいろな情報が飛び交っている。静観したい」など反応はさまざまだ。(竹内雅紀)
かつては「民主王国・愛知」と言われ、その象徴の選挙区でもあった愛知11区(豊田市=旧稲武町を除く、みよし市)。トヨタ労組が“自前”の候補者を初めて擁立したのは52年前の1969(昭和44)年の衆院選だった。当時は1つの選挙区から3〜5人の候補者が当選する中選挙区制が採用されていた。故渡辺武三氏、故伊藤英成氏、今回不出馬を表明した古本伸一郎氏(56)が3代続けて強固な組織票を背景に議席を守ってきた。90年代からは所属政党が変わりながらも圧倒的な強さを誇ってきた。
しかし、時代とともに状況は変化。自動車産業が直面する政策課題(カーボンニュトラル=温室効果ガス排出実質ゼロ)に対して、与党を含めた超党派での連携を進めてきた。14日の不出馬会見で、対立を前提とした小選挙区制度に反対する古本氏は「自民党を想定して(不出馬を)判断したわけではない」と“配慮”を否定したが、自民党前職と共産党新人が立候補を予定している同区では自民党が優位になるのではとの見方が大勢を占めている。
トヨタ労組の西野勝義執行委員長は同日の会見で「愛知11区周辺の選挙区については、これまで以上にしっかりと連携していきたい」と述べた。
愛知12区(岡崎・西尾市)では、立憲民主党前職の重徳和彦氏(50)がトヨタ労組などの支援も受けて選挙に臨む予定だ。陣営関係者は「これまで通りやるだけ」と、隣接する選挙区での動きに驚きを示しながらも冷静だ。労組の支援を受ける地方議員は「衝撃だった。影響がないと言えばうそになる」としながらも「組織としては粛々とやるだけ。むしろ気を引き締めないといけない」と語った。
同区から立候補を予定している自民党前職の青山周平氏(44)の陣営は「急なことだったのでびっくりしているが、特にどうということはない。細かい情報が入っていないため、静観するしかない」と受け止めている。