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東海愛知新聞

苦難乗り越え活躍誓う

24日開幕 東京パラリンピック出場の岡崎出身2選手

24日に開幕する東京パラリンピックの陸上とカヌー競技に岡崎市出身の女性選手2人が出場する。新型コロナウイルス感染症のパンデミック(世界的大流行)の中で行われる今回の東京大会。練習が制限されるなど厳しい状況の中で鍛錬し、日本代表入りを決めた2人に今大会に懸ける思いなどを聞いた。()

目指すはメダル カヌーの加治良美選手(40)

5月にハンガリーで行われたワールドカップ(W杯)で6位となり、日本代表入りを決めた。9月2日から行われる本番では、両側に水をかく“羽”が付いた(かい)を左右交互に()いで直線200メートルのタイムを競うスプリント種目のうち、「カヤック」部門のKL3(片足に中程度の運動障害、片足と足首に重度の障害、手足の欠損がある選手のクラス)に出場する。

W杯では課題も浮き彫りになった。スタートは他の選手より前に出て競り合うことができていたが、中盤あたりからスピードが減退。相手に離される状況があった。そこで、スタートからの短い距離でスピードを上げていく練習のほか、筋力を上げるためにウエイトトレーニングなどに取り組んだ。

14歳のときに交通事故に遭い、両足を切断。大学卒業後は岡崎市内の小学校で教員として勤務する傍ら、車いすマラソンの選手として活躍した。転機は2014(平成26)年。秋ごろに岐阜県で行われた車いすマラソンの大会で優勝した際、同県カヌー協会の関係者から勧誘を受けたことだった。同年冬ごろには本格的にカヌーに取り組み始め、ようやく今年、念願だったパラリンピックへの切符をつかんだ。

新型コロナの影響で水上が使えない期間もあったが、「今やれることをやるしかない」と気持ちを切り替えてカヤックエルゴ(カヌーに乗った際の動きを再現できる器具)などを使いながらスピードをキープする練習を重ねた。

コロナ下でのパラリンピックとなることについても「開催することに対してそれぞれ思うところがあると思うが、自分たちがやれることは、競技と向き合って、自分を磨くこと。そこだけはぶれずに続けていこうと思っている」と先を見据える。

世界のトップ選手とのタイム差は2〜3秒。「メダルに届く可能性もあるので、やるからには表彰台を目指したい」と意気込んでいる。

2度目の大舞台へ 陸上の山本萌恵子選手(23)

「4分50秒を切って入賞したい」。あくまで謙虚でありながらも、自身の能力を客観的に分析できる強さが今回の日本代表入りにつながった。9月3日から行われる競技では、1500メートルT20(知的障害のクラス)に出場する。

パラリンピック出場は2度目。前回のリオデジャネイロ大会では7位に入賞したものの、実質的には最下位という結果だったため、“満足いく結果”とは言えなかった。世界ランク8位で臨む今回の東京大会。並み居る世界の強豪と対等に戦うために自身を鼓舞しながら練習に取り組んでいる。

職員として所属する光ヶ丘女子高校(岡崎市大西町)の陸上部員と共にトレーニングに励む中で見えてきた課題は「1人で走る」ということ。速い選手に付いて走ったときには良いタイムが出るが、1人で走ると、どうしてもタイムが落ちがちに。そのため、自らペースをつくって走る練習を重点的に行っている。また、持久走や「レペティショントレーニング」(全力疾走と休憩を繰り返すトレーニング)、体幹トレーニングなども行い、9月の本番に備える。

陸上競技を始めたのは中学1年生の夏。自閉症の療育のために訪れた「トモニ療育センター」(愛媛県新居浜市)の医師の勧めで毎朝のランニングを開始した。初めは3キロのコースを2時間かけて泣きながら走っていたが、次第に順調にこなせるように。駅伝部にも所属し、どんなに遅くても食らいついて練習した。そして今は“パラリンピアン”(パラリンピックに出場経験のある選手・元選手の総称)として2度目の大舞台を目前に控える。

陸上の魅力は「頑張るとタイムが付いてくること」。日々の練習に裏打ちされたこの言葉通り、現在の1500メートルの自己ベストは4分52秒35。3キロを2時間かけて涙で走った少女はもういない。「メダルは(3年後の)パリで」と恥ずかしそうに話す目の奥には闘志がみなぎっている。

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