一筆に気持ち込め
滝山寺 御朱印担当の田中さん
岡崎市の田中克彦さん(69)が、2012(平成24)年から同市滝町の滝山寺で御朱印の揮毫を行っている。近年では「御朱印ガール」という言葉が生まれるなど、中高年だけでなく若者にも人気が高まっている御朱印。田中さんは「(書く時には)リズムが大事」と笑顔を見せる。(犬塚誠)
「御朱印」は、元は写経を奉納(納経)した参拝者に対して寺院が授与していたもので、現在では寺社への参拝記念印として集める人も多い。同寺では、本尊である薬師如来と宝物館に安置されている運慶作の聖観音(国の重要文化財)の名前を記した2種類(共に1体300円)を授与しており、田中さんはそれらの揮毫を担当。仏の名前などを筆で書いた後「実宝印」と呼ばれる印や寺の公印を押して仕上げる。
御朱印を書く上で心掛けるのは「内容を知ること」。薬師如来や聖観音がどのような仏であるかや、その成り立ちまで調べた上で一点一画に気持ちを込める。また、同寺に残る鎌倉時代の書家藤原経朝による扁額の書体なども取り入れつつ、ほかにはないものを目指す。
田中さんは、12年に行われた山門落慶法要を機に、同寺でのボランティアガイドを開始した。その中で、山田亮盛住職から依頼を受け、御朱印の揮毫を行うようになった。書道経験はなかったが、山田住職から指導を受け、現在では1日に20冊の御朱印帳に筆を走らせることもある。
最近では若い拝観者が増えているという。田中さんは「御朱印を受けてもらうとともに、滝山寺の魅力も知ってもらえれば」と熱く語っている。