先取りで生き残り
岡崎・協発工業 SBTイニシアチブの認定取得
岡崎市上里3のプレス加工メーカー「協発工業」が計画した2030年における自社の温室効果ガス削減目標がこのほど、国際的な組織「SBTイニシアチブ」から科学的根拠に基づいた目標として認定された。同市内の企業では初めて。日本を含めた各国の企業が気候変動に対する取り組みを重視し、今後続々と取得を目指すと予想されている。柿本浩社長(54)は「取得できた意義は大きい。企業評価にもつながるため、多くの会社が取得し、全体で地球温暖化防止に寄与できれば」と思いを語る。 (竹内雅紀)
2030年までに温室効果ガス半減
柿本社長がSDGs(持続可能な開発目標)に興味を持ち、気候変動への取り組みがSDGsにもつながるとして約2年前に動き出した。同社に太陽光発電設備を販売し、二酸化炭素の排出量算定も行う建設業ジェネックス(碧南市)がサポート。まずは環境分野での格付けをする英国の「CDP」に認めてもらうため、二酸化炭素排出量などの環境情報を収集し申請した。SBTの申請はその後で、事前に把握していた排出量などを基にして昨年夏に提出、今年1月末に認定通知が届いたという。
3月9日現在で国内のSBT認定企業は91社。大企業中心だが、昨年4月から中小企業も申請しやすくなり、協発工業は自動車・輸送用機器の分類では国内初という。ジェネックスは昨年1月に認定されている。
気候変動への取り組みは他社も追随
協発工業の2018年の排出量は二酸化炭素換算で179トン。内訳は、自社での化石燃料消費による排出量が17トン、自社が購入した電力の使用に伴う排出量が162トン。これを9年後の30年に半減させるのが目標だ。大企業の場合は自社分に加えて、サプライヤー(供給元、仕入れ先、納入業者など)にも目標設定を求めている。気候変動への取り組みをしない中小企業は今後、大企業との連携から外される可能性も考えられる。柿本社長は「企業として生き残りを懸けた差別化手段。今後追随する企業も増えるのでは」との見解を示す。
SBT申請は目標の数字を設定し、意思表示をすることがメイン。具体的な方法論は今後社内で協議するという。自社工場で使用する電力を再生可能エネルギー(太陽光、風力、地熱など)に変更すれば達成できるが「各自ができることを考えていきたい。菅義偉首相の50年の温室効果ガスゼロ(カーボンニュートラル)・脱炭素社会実現を目指す宣言でこうした動きが加速すると思う」と柿本社長は捉えている。