平和ヲ願イマス
75年前の空襲体験が紙芝居に
戦争はいかん—。75年前の岡崎空襲の体験者の実話を基にして制作された紙芝居「平和ヲ願イマス」が23日、岡崎市地域交流センター六ツ美分館(悠紀の里)で初披露された。体験者が高齢化する中、悲惨な体験を後世に伝えたいとの思いから語り部グループが実現にこぎ付けた。(竹内雅紀)
紙芝居の基になったのは、中嶋清さん(91)の体験。中嶋さんは17歳だった1944(昭和19)年9月に海軍飛行予科練習生として滋賀海軍航空隊に入隊した。翌45年7月に一時帰郷が許可され、岡崎に戻った際に「岡崎空襲」(同月20日未明)に遭遇した。自宅は被災を免れたが、恩師を心配して出掛けた時に見た光景はすさまじいものだった。戦後60年に当たる2005(平成17)年に「体験画」として数々の水彩画を描き、「岡崎空襲と戦争展」に出品。後に「岡崎空襲を記録する会」に寄贈した。「戦争を知る世代が少なくなる中、少しでも多くの人に悲惨な体験を知ってもらいたかった」と中嶋さんは振り返る。
昨年10月に悠紀の里で開かれた「みんなのむつみ展」に中嶋さんの体験画が出品された。心を打たれた同所スタッフが、西三河地方で活動する語り部グループ「言の葉 ふくろう会」に中嶋さんを紹介したことが紙芝居化のきっかけとなった。「中嶋さんの体験談を基にして創作の語りを入れた。平和を考えるきっかけになれば」と同グループ。
紙芝居は11枚で構成され、朗読時間は約15分。焼夷弾投下や混乱する防空壕内、消火のためのバケツリレー、変わり果てた様子の翌朝の街中など、中嶋さんの目と心に刻まれた“傷跡”と苦しい胸の内が静かな語りとともに展開された。悠紀の里5周年を記念したイベント「2020ゆきフェスタ」の中で行われたこともあり、会場内では多くの市民らが聴き入った。
紙芝居の最後はこう締めくくられた。「家や家族、大事な人を焼き、人生を大きく変えた。体験者の心には大きな傷跡が残った。戦争はいかん。実話はメッセージです。ただ平和を願います」