あいちトリエンナーレ 豊田会場に影響
抗議続々 展示変更も
企画展「表現の不自由展・その後」の展示中止をめぐって波紋が広がる国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」。名古屋会場に端を発した一連の問題は、「あいちトリエンナーレ実行委員会」(名古屋実行委)とは独立した「あいちトリエンナーレ2019豊田会場実行委員会」(豊田実行委)が運営する豊田会場にも、出展作家の展示内容変更や相次ぐ抗議といった影響を及ぼしている。(今井亮)
豊田実行委は、豊田市の副市長や豊田商工会議所会頭、豊田市文化振興財団専務理事、豊田市美術館長ら6人で構成。全体運営の中で会場を貸し出すなど、あくまで「協力関係」に位置づけられることから、名古屋実行委のメンバーには加わっていない。名古屋、豊田両会場の出展作家の選出を除き、豊田会場の運営と作品関連経費以外の事業予算は独立している。豊田実行委事務局を兼務する豊田市文化振興課は「『表現の不自由展・その後』の具体的な展示内容は開幕直前に初めて知った」と戸惑う。
■100件以上
8月1日の開幕と同時に「表現の不自由展・その後」に関する報道が顕著になってから、19日までに同課と同市美術館には100件以上の電話とメールによる抗議が相次ぎ、職員らが釈明に追われた。抗議は1〜3日に集中し、大半は「表現の不自由展・その後」に対する反発。「豊田市も(名古屋実行委と)一緒になって(『表現の不自由展・その後』に)賛同しているのか」「日本人として情けない」などと憤る内容が目立ち、釈明に対して「責任転嫁するのか」と収まらないケースもあった。
名古屋実行委とは「電話をかけても鳴り続ける一方で、まともに連絡が取れない状況」という。同課は「本来の会場運営に『表現の不自由展・その後』の問題や展示中止以降に相次ぐ出展作家の展示辞退の対応が重なり、現在の名古屋実行委に連絡を取り合う余裕はないのでは」と推察。一連の問題について名古屋実行委からの説明はなく、豊田実行委に相次いだ抗議は、名古屋実行委につながらなかった余波の可能性もある。
■問題報道紙でくるむ
そんな中、豊田会場(8カ所)の1つである同市美術館に絵画や彫刻を出展しているキューバの作家、レニエール・レイバ・ノボさんが13日、名古屋実行委に展示辞退を申し出た。キュレーター(企画・構成など)として担当している同市美術館の学芸員による説得で展示中止は免れたが、作家本人の指示で19日、一連の問題を報じた新聞紙で絵画をくるみ、黒いごみ袋で彫刻の一部を覆う「展示内容変更」が行われた。作品展示スペースには表現の自由を訴える作家らの共同声明文、受付カウンター付近には来場者に向けた名古屋実行委の釈明文が貼り出された。
同課は「事態は流動的だ」とした上で、「豊田会場の現代芸術に触れる中で豊田市の魅力を知ってもらい、市の活性化につなげるきっかけづくりに注力する。来場者の意見を踏まえ、10月14日の会期末までより楽しんでもらえる運営に努める」としている。