作者は仏師快慶か
滝山寺の十一面観音像
岡崎市滝町の滝山寺が所蔵する仏像「十一面観音像」が鎌倉時代に活躍した仏師の快慶本人か、快慶が存命中に快慶の工房で造られたことが分かった。官学民連携で快慶の仏像の特色など調べる研究グループ「光学的方法による快慶作品の調査研究会」が明らかにした。同寺の記録ではこれまで作者は不明だった。(横田沙貴)
快慶は同じ流派の運慶と手掛けた、奈良県・東大寺南大門の金剛力士像の作者として知られる。生前は阿弥陀如来像を多く造った。仏像の顔は若々しく、穏やかな作風で、高い技術を持ち合わせていたという。
同会は2017年から全国で快慶作とされる仏像をエックス線撮影し、構造や納入品などを調べ、非破壊調査での快慶作品の判断基準を設けることを目的にしている。
十一面観音像は高さ48.8センチ。快慶の初期の作品にみられる穏やかで若々しい作風。エックス線撮影で、瞳は円形のガラス状の部材、顔の裏面から別の板で固定、顔は1つの木材で成形といった構造的な特色がみられた。下半身に寄進者の名前を記したと思われる長さ6センチ、直径1センチ程度の巻物状の納入品3本も見つかった。
また、作風などの比較のために実施した、同寺所蔵で運慶または運慶と長男湛慶親子の作とされる国重要文化財「帝釈天像」(高さ104.9センチ)のエックス線撮影でも、脚部に紙で包まれた箱、または折り畳んだ紙のような納入品1点が見つかった。内容物は不明だが、源頼朝の3回忌で造られたという経緯から、頼朝に関わるものが収められている可能性があるという。
グループ代表者で多摩美術大学の青木淳教授(54)は、「運慶は計算して納入品を入れているが、快慶は詰め込めるだけ入れるというように、内部を見ると違いが明らかだった。快慶の足跡を追いかける手がかりになる」と説明した。山田亮盛住職は「十一面観音の作者が明らかになったことは大変価値があり、ありがたい。寺宝として今まで以上に大切に守っていきたい」と話している。