学生が「版築」に挑戦
岡崎・松應寺 御廟所の土塀修復へ
徳川家康の父・松平広忠の御廟所がある岡崎市松本町の松應寺(服部善樹住職)で、愛知産業大学造形学部建築学科の学生と同大学院造形学研究科建築学専攻の院生らが、伝統的な土塀の工法「版築」の復元に挑戦している。版築は御廟所を囲む土塀にも用いられており、崩落が進んでいる土塀の修復に期待が寄せられている。(横田沙貴)
同寺は家康が広忠を弔うため、1560(永禄3)年に創建。御廟所は広忠の57回忌に当たる1605(慶長10)年に整備されたとされる。御廟所の土塀は全長約60メートルで、壁面には社寺では最高級の位を示す5本線が描かれていたという。服部住職によると近年の豪雨や台風などで経年劣化していた土塀の損壊が進み、数メートルにわたって崩れ落ちた場所もある。残っている土塀も崩落する恐れがあるため、同寺は復元工事の準備を進めている。その一環で建築を学ぶ学生が伝統的な工法に触れるきっかけになればと同大に協力を依頼。同大学院の宇野勇治准教授とゼミ生らが参加を申し出た。
版築は中国伝来とされる工法で、型枠に入れた赤土を足や専用の道具でたたいたり突いたりして固めてから、表面に漆喰を塗り、瓦をふいて仕上げる。しっかり作れば何百年も残る耐久性があるという。日本国内では製法の記録が残っておらず、宇野准教授が中国の文献を参考に型枠や道具を設計し、学生が土塀を試作。赤土や砂利の配合を変えた複数の土でプレス機での強度測定や風化への耐久実験も行い、優れた組み合わせを探る。
宇野教授と学生は4月から文献で版築の調査を開始し、9月に幅2メートル、高さ0.4メートル、厚さ0.6メートルの型枠と土を突き固める道具を完成させた。10月2日に土塀造りを始め、この日1日で0.4メートル分の赤土を積み上げた。今後は高さが1.2メートルほどになるまで作業を繰り返した後、表面に漆喰を塗り、屋根瓦をふく。冬場は養生させ、来年3月ごろに仕上げる。
土塀の本格的な修復工事の開始時期は未定だが、完成まで3年ほどかかる見通し。工事は伝統工法を得意とする工務店のナチュラルパートナーズ(日進市、大江忍社長)に依頼するという。