岡崎市美術博物館が、休館を伴う約1年間の大規模な改修を終え、あす9日に始まる市制施行100周年記念の企画展「大鎖国展―江戸に咲いた異国の花」で、再オープンする。日本史上で「鎖国」とされる17世紀前半から19世紀半ばまでの江戸時代。しかし実際は完全に閉ざされた国ではなかったことを裏付ける「江戸に広がった異文化」を、全国から集めた国宝や国の重要文化財などで紹介する。(今井亮)
「鎖国の再考」をテーマにした同展の展示構成は、「異国の眼―鎖国という言説」(プロローグ)「鎖国の成立」「異国への窓口」「江戸に咲いた異国の花」「江戸の好奇心」「異国の眼―泰平の世」(エピローグ)。同館の所蔵品をはじめ、東京都〜鹿児島県の国立博物館や美術博物館、古美術商など、全国40カ所以上から集めた国宝5件、国の重要文化財15件を含む約160件の絵画、書面、彫刻などが展示される。
寛永11(1634)年に徳川三代将軍・家光が家老の年寄によって発令させた書面「江戸幕府年寄連署奉書案」(国宝)は、外国との貿易があった長崎などに対して、キリスト教の流布に規制をかけた鎖国令。その一方で、貿易がもたらす利益を無視できなかった幕府側が他の貿易先を見つけることを命じた「長崎奉行連署書状」が存在する事実に、幕府の思惑が見え隠れする。
また鎖国で知るすべがなかったはずの西洋画を、当時の日本画家が模写した作品も。谷文晁は18世紀後半〜19世紀初頭にファン・ロイエンの花鳥図を模写。若杉五十八が描いた西洋の人物図の油絵のほか、発明家として知られる平賀源内の「エレキテル」もある。
同館の担当者は「これらは『閉ざされた国ではなかった』ことを示す象徴。西洋画の精密さに魅せられた上での模写と推察できる。平賀源内の発明品は江戸の庶民に異文化交流を広げるきっかけになった」と考察。「教科書に記述のない異国の影響を知ってほしい」と話している。
同展は5月22日まで。開館は午前10時〜午後5時(入場は午後4時まで)。高校生以上1,000円、小中学生500円。市内の小中学生は無料。
改修では美術品保管の生命線となる空調設備を修復し、湿度や温度管理を安定させた。作品の展示に用いるくぎや画びょうの穴が目立っていた展示室の壁を取り替え、作品への影響が少ないLEDを展示照明の一部に採用。外観ではガラス張りのホール「アトリウム」を覆う電動ロールスクリーンの一部不作動を解消した。改修費は約3億7,600万円。