8月としては観測史上最大の時間雨量を記録した「平成20年8月末豪雨」。7年前の8月29日未明、停滞した前線の湿った空気の影響で146.5ミリの猛烈な集中豪雨に見舞われた岡崎市では、伊賀川、広田川、占部川、砂川、鹿乗川が氾濫。市民2人が犠牲になり、流域を中心に計3365棟の床上・床下浸水という被害をもたらした。床上浸水対策特別緊急事業として平成21年度に始まった5河川の護岸工事は国、県、市が総額約210億円を投じて今年度内に完了する。(今井亮)
死者が出た市の中心部を流れる伊賀川。流域は住宅が密集し、越水と氾濫によって全壊5棟、5河川の流域の中で最多の393棟が床上浸水した。下流から堤外家屋の移転・撤去、改修と並行した橋の改築を経て瀧見橋〜中橋区間と神明橋〜猿橋区間の川幅の拡幅などを重点的に実施。これまで土手だった法面は、床上浸水対策特別緊急事業の対象になっている2.4キロが、コンクリートブロックに覆われた。
広田川(床上浸水対策特別緊急事業対象区間2.8キロ)、占部川(同5キロ)、砂川(同0.6キロ)を含む「広田川流域」では、各河川の拡幅をはじめ、浸水被害の軽減を図る堤防を構築。鹿乗川(同0.8キロ)も同様に拡幅し、洪水の安全な流下を図る護岸の整備が進められている。7月末現在、伊賀川と広田川の護岸工事は完了している。
県の試算によると、護岸工事完了後の5河川は8月末豪雨と同規模の集中豪雨に見舞われた場合、伊賀川流域は床下浸水106棟、広田川流域(3河川)は床下浸水197棟、鹿乗川流域は床下浸水25棟にとどまると想定されている。
床上浸水対策特別緊急事業は5年をめどに進められてきたが、川幅の拡幅に伴う周辺の用地買収や補償などで工事の一部が難航。事業を繰り越すことで対応してきた。
工事は県が伊賀川、広田川、砂川、鹿乗川、市が占部川を管轄。総工費は4河川に国が2分の1を補助。占部川には国、県、市が3分の1ずつを支出している。