精密ダイキャスト部品納入や全数検査画像処理のソフト開発を行うATA(岡崎市美合町、小林由明社長)の小林丈之専務(39)がこのほど、映像情報メディア学会の総会で、画像処理の研究分野において丹羽高柳賞「論文賞」を受賞した。社会人学生として平成22年から5年間、大学で研究した成果が評価されたことに満足し「この結果を今後に生かしたい」と話した。(竹内雅紀)
小林さんは、経済産業省の補助金採択事業にもなった太陽光パネル検査装置の研究を名古屋工業大学と共同で行った。週に1回、大学でミーティングをし、ほかは会社や自宅で研究に取り組んだ。研究では太陽光でピントがゆがむことが課題となり、今回受賞した論文を書くきっかけにもなった。
論文のテーマは「IPSFに基づく動きぼけと奥行きぼけの同時復元」。写真撮影時に生じる「ピンボケ」は撮影対象の位置(手前か奥にあるか)や動きによってムラができる。そのボケのムラを均一にし、ボケを一括で取り除く画像処理をすれば、複雑な処理をせずに元の対象物が鮮明に見えることを証明した。応用すれば、手ぶれ補正機能などがあるデジタルカメラに今後、均一のボケ補正という新機能の追加もありうるという。実験では、撮影側が対象物から距離を取りながら移動し、全体がボケる位置などを測定した。
論文は、同大の佐藤淳教授、坂上文彦准教授ら4人で取り組み、昨年9月の学会誌に掲載された。同賞は昨年度1年間に投稿された論文の中から特に優秀だったものを表彰。今回は小林さんらのほかに2点が選ばれた。
同社では、独自の画像処理技術を生かして商品の表面にある細かな汚れやキズの検査もしている。今回の研究を応用すれば、対象物が高速で回転しながら(動きながら)でも検査が可能になり、生産性も上がるのではないかという期待がある。小林さんは「画像処理のコアな部分を大学で勉強できた。画像処理のソフト開発などに応用できれば」と意気込んでいる。