12日に行われた愛知県議選は自民党が単独過半数を獲得した。岡崎市・額田郡選挙区(定数5)と西尾市選挙区(同2)では維新の党の公認、推薦候補がそろって当選。ほかの選挙区とは少し異なる様相となり、昨年12月の衆院選愛知12区(岡崎・西尾市、幸田町)で維新が勝利した影響が色濃く出たとも言える。勢いに乗る維新に対して、自民、民主両党は危機感を募らせている。選挙結果を基に4年に1度の春の決戦を振り返る。(県議選取材班)
岡崎市・額田郡選挙区は合区で初の選挙。改選前の議席は岡崎市が自民2、民主1、維新1、額田郡(幸田町)が自民1だった。自民は現職1、新人2の3人を擁立し全員当選での“現状維持”を狙った。一方で、維新は現職と元職の2人を擁立して党勢拡大を目指した。民主は現職1人の擁立で確実な議席確保の立場を選んだ。
投票率は両自治体とも県議選史上過去最低(岡崎市38.74%、幸田町46.13%)を記録。岡崎市は5.65、幸田町は前回よりも13.46下がった。幸田町の場合、同町に地盤を置く“自前”候補が出なかったことが関心の低さに影響したと言える。
自治体別得票結果を見ると、大票田の岡崎市での順位がそのまま得票順位に反映されている。民主現職の西久保長史氏(60)はともにトップ。ただし、定数5での1人擁立や、県連が「最重要区」と位置付けていた西尾市選挙区での現職落選、衆院選愛知12区で維新との候補者一本化などが党への求心力低下につながることは否めない。
自民は現職の中根義高氏(42)が順調に票を伸ばして再選、新人の新海正春氏(63)も接戦の末当選を果たしたが、新人の梅村順一氏(56)は幸田町では2位につけたものの、岡崎市での票が伸びず、3年前の補選に次いで涙をのんだ。新海氏と梅村氏は約1000票差だが、新海氏と中根氏は約7500票差と開いた。補選時も当選した中根氏と落選した梅村氏の差は3万票以上で「票割り」に失敗した感がある。
地域別でみると、中根氏は岡崎市北部、新海氏は南部、梅村氏は東部に地盤がある。基礎票がやや少ないとみられていたのは梅村氏。注目は中央地域の票の行方だった。学区ごとに支持する候補者が異なる保守系市議の地盤もあったようだが、長年同地域を地盤として県議を務めた内田康宏市長は「票割りは簡単ではない。強要はできないし、味方が大勢の選挙は難しい」と話した。
自民3人の票の合計は維新2人の合計を上回り、3分割すれば全員当選していた計算になるが、それは皮算用。衆院選愛知12区での敗退に続き、維新と同じ2議席にとどまった今回の県議選。「まさか維新が2つ取るとは」とショックを隠し切れない支持者も。
維新は3位以下の混戦の中、2人とも当選圏内に入った。現職鈴木雅登氏(44)と自民・梅村氏の差はわずか475票。辛勝だったが補選に続いて勝利した。3位で当選した元職園山康男氏(50)は大村秀章知事や重徳和彦衆院議員とともに行動する場面が多く見られたが、鈴木氏はつじ立ちや電話戦略など独自の戦い。「まるで同じ党とは思えない」と他陣営が言うほど戦略が異なった。
しかし、県内で維新が議席を獲得したのは岡崎市・額田郡選挙区のみ。また、西尾市選挙区では推薦した候補が当選しており、本人たちの自力に加えて「重徳人気」が功を奏したと言える。関係者は「この勢いで来年秋の岡崎市議選も維新旋風を」と意気込んでいた
無所属新人の楢原伸一氏(56)は目立った活動をしていないにもかかわらず2000票超を獲得。主要政党への批判票の受け皿になったとの見方もある。