東海愛知新聞バックナンバー

 3月13日【金】

行政代執行で対立

岡崎市 違法建築物取り壊しめぐり

岡崎市が平成25年2月に建築基準法違反だとして同市羽根北町3の賃貸マンション所有者に是正措置命令(180日以内の取り壊し)を発令した件で、税金を使って取り壊す行政代執行をめぐり市と所有者の男性(71)が対立。訴訟などを通してそれぞれの言い分を主張しているが話は平行線をたどり、決着していない。周辺住民も懸案事項として経過を見守っている。(竹内雅紀)

手抜き工事? 倒壊の恐れも

賃貸マンション「エトワール」は鉄骨5階建て、延べ床面積は812平方メートル。24戸あり、いずれもワンルームタイプ。

市によると、16年6月に建築確認申請が出されたが、柱と梁の接合部分が簡易なボルトで止めてあるだけだったり、地中梁が施工されていなかったりなどの“手抜き工事”だったと指摘。耐火性もなく震度5強の地震で倒壊する恐れがあると判断した。

同年12月に工事禁止命令を出したが、翌年1月から入居が始まった。2カ月後には使用禁止命令を出し、入所者への退去勧告も再三行ったが所有者は受け入れなかった。17年には所有者が損害賠償を求める訴訟を起こしたが市が勝訴。25年2月の是正措置命令後も期限の180日以内に自主的な取り壊しを行うことなく現在に至っている。その間、是正措置命令取り消しや使用禁止義務不存在確認を求める訴訟を所有者が起こしたがいずれも市が勝訴。現在、最高裁に上告中の案件もあるという。

予算計上も繰り越しに

市は平成26年度一般会計当初予算に行政代執行費7,470万6,000円を計上したが、年度内不履行が確実となり、今月9日の市議会3月定例会で新年度への予算の繰り越しが承認された。担当者は「入居者が是正命令措置発令時とすべて入れ替わっている。まずは退去を促すことだ」と頭を悩ます。今後は現在よりも目立つ看板を設置して退去対策を強化する。

不備指摘し徹底抗戦へ

一方で、所有者の男性は市が16年8月に現地調査した際の報告書の不備を指摘。「地中梁がない」「梁の継ぎ手が基準法の手法になっていない」となっており、17年の使用禁止命令書にも「地中梁が施工されていない」「柱と梁の接合が規定の方法で行われていない」と記載されていることから「どこに何がどれだけ足りないのかなど具体性に欠けている。詳細資料や証拠写真の添付もなかった。行政手続き上の不手際だ」と主張。一級建築士による調査を経ていると言い「市の指摘には根拠がない。全くもって理不尽だ」と怒りをあらわにし、徹底抗戦する構えだ。所有者によると、現在マンションの入居者は全体の半数程度。日本人のほか外国人も暮らしているという。

不安がる周囲

周辺住民は違法建築物という認識よりも「工事中に火花が飛び散って危険だった」「エアコンのホースの水が道に漏れている」などの諸問題を不安がる。「強引な介入はできないため黙って経過を見ていることしかできないけれど、一刻も早く良い方向に進んでほしい」と願うばかり。また、市に対しては「経過の情報提供をお願いできたら」と希望している。