幸田町大草保育園がこのほど、一昨年前から取り組んでいる活動をまとめた論文「『たまごは命なんだよ』命を感じ、大切に思う気持ちを育む“たまごプロジェクト”」で「ソニー幼児教育支援プログラム」の優秀園に選ばれた。同園が優秀園に選ばれるのは3度目。(横田沙貴)
同園に平成25年11月、移動動物園がやってきた。このときアイガモが産み落とした有精卵を譲り受け、園児は自らの手でひなをかえしたいとアイデアを出し合った。卵は温度37度湿度60%程度の空間で温めると28日ほどでふ化する。園児は発泡スチロールの箱に電気あんか、わら、毛布などを使った自作のふ卵器で卵を温めた。
だが28日を過ぎてもアイガモはかえらなかった。卵の腐乱臭により卵がかえせなかったことが分かった。翌年1月、ウコッケイの有精卵を同じふ卵器を使ってかえそうとしたが失敗。原因は、多くの園児が卵の観察、転卵(定期的に卵を転がす作業)を行っていたことにより、ふ卵器内の温度が下がっていたためだった。
この失敗から、2月からは市販のふ卵器でウズラの卵10個のふ化に挑戦。卵が冷えないよう細心の注意を払った。転卵などは園児が2〜4人ずつ順番に行ったところ18日ほどで体長4センチほどのオスとメスが1羽ずつ生まれた。
オスは「らん」、メスは「うず」と名付け、絵本『うずらのうーちゃん』や、町民からのアドバイスを参考にしながら飼育。2羽はたくさんの卵を産み、園児はさらに50羽かえし、保護者や町民に譲った。
活動の中で園児はひなの誕生を喜ぶだけでなく、卵から出る前に消えてしまった命に涙を流すこともあった。論題の「たまごは命なんだよ」は、活動の中で園児の1人が発した言葉から。成瀬英子園長は「子どもの『あんなことをしたい』『こんなことをしたい』を受けて、そこから発展させることが、子どもの意欲につながると信じている。私たち自身も手探りですが、子どもたちが体験した挑戦と経験が糧になれば」と話している。
現在園内では、らんとうずを含むオス2羽とメス4羽を飼っている。近隣の幸田小学校にオス1羽とメス2羽を譲ることが決まっており、同校で19日に“入学式”が行われる。
ソニー幼児教育支援プログラムでは論文や現地調査での審査があり、入選園には助成金などが贈られる。今年は全国の幼稚園や保育所、認定保育園から論文94点の応募があり、最優秀園2園、優秀園10園が選ばれた。
大草保育園は7年前から参加しており、これまで優秀園に2回、奨励園に1回選ばれている。