東海愛知新聞バックナンバー

 3月27日【木】

千万町茅葺屋敷 惜別のにぎわい

岡崎市千万町町にある交流体験施設「千万町茅葺(かやぶき)屋敷」が今月いっぱいで閉鎖される。築300年余の建物は平成15年のオープン以来11年間、額田地域での地域活性化活動の拠点として、住民と他地域の人々との橋渡し役を務めた。改装前の姿を目に焼き付けようと、連日多くの人でにぎわっている。(大山智也)

■今月末閉鎖、新たな展開へ

千万町町と木下町の住民有志による地域活性化団体「じさんじょの会」 (荻野昌彦会長) と、旧額田町まちづくり課が中心となり、平成14年に所有者の許諾を得て家屋を改装した。翌15年、都市部との交流を目的に宿泊やそば打ち、田植え、バーベキュー、マスつかみなど、さまざまな季節のイベントが楽しめる体験施設としてオープン。

18年に旧額田町が岡崎市に編入合併されてからは、市が屋敷の所有者と賃借契約し、じさんじょの会に管理を委託した。

施設は、宿泊や食事、各種体験が行える母屋、地元特産品を販売する売店がある隠居家、蔵、倉庫、水車小屋からなる。敷地内には小川も流れており、豊かな自然の中でゆったりとしたひとときが過ごせる。これまでに約17万人が来場した。

当初は25年3月末までの契約だったが、23年度に契約期間を1年延長。継続を望む声はあったが、所有者の意向もあり、市は来年度中に500万円で個人邸宅用に改装し、返還する。

閉鎖を知って訪れた60代の男性は「地元と他地域を結ぶ象徴であり、自然の営みが感じられる本当にいい場所だった。閉鎖は寂しいけれど、茅葺屋敷に代わる新たなシンボルが登場することに期待したい」と話した。

営業は午前9時〜午後4時。問い合わせは同施設(83―2590)へ。

■拠点移し、活動継続

荻野会長は「オーナーにはただただ感謝。茅葺屋敷を訪れる人の応援と関係者の協力があって、これまで続けることができた」と振り返る。「閉鎖は非常に残念だが、これを活動の一つの節目とし、将来『あのときは残念だったが、気持ちを一新するきっかけになった』と前向きに話せるよう、じさんじょの会の活動は継続していきたい」と意気込みを語った。同会は今後、活動拠点を額田地域内の別の場所へ移し、バーベキューなどの交流イベントを継続する予定。