東海愛知新聞バックナンバー

 2月6日【木】

山本鼎の下絵もとに村山槐多が大作描く

岡崎市美術博物館 学芸員・村松和明さん
水彩画「日曜の遊び」 研究の成果を出版

二百号を超す水彩画の大作「日曜の遊び」の作者は、ともに岡崎市出身の画家、山本鼎(1882〜1946年)か、従弟の村山槐多(1896〜1919年)か――その真相を追って20年以上にわたり調査してきた同市美術博物館学芸員の村松和明さん(50)。その成果を1冊にまとめた『引き裂かれた絵の真相―夭折の天才村山槐多の謎』が、このほど講談社から出版された。

大作「日曜の遊び」は当初、村山槐多の作とみなされていた。しかし、長野県上田市の山本鼎記念館で、この大作の下絵と見られる小品が発見され、鼎の作と訂正された。その大作を岡崎市が昭和61(1986)年に購入し、同市美術館に収蔵されている。

その際、村松さんは「鼎の作品としては異例な大きさであり、作風や色調なども大きく外れている」と違和感を覚え、以後、“謎解き”を始めた。

村松さんは、下絵と大作の部分的な筆致の違いや、下絵とそれを引き伸ばすための基準線に手書きされた数字の特徴などを比較。その結果、平成21年には「鼎が描いた下絵をもとに、槐多が大作をものした可能性が高い」との結論に至ったという。

■槐多は岡崎生まれ

本は『日曜の遊び』をはじめ、新発見を含む槐多の作品41点を収録。これまで横浜生まれとされていた槐多が岡崎で生まれたことなど調査の過程で判明した事実を四六判、190ページにまとめている。  1冊1,800円(税別)。書店で扱っている。(山本浩禎)