岡崎市上六名4にある「針院さとうTSSケアルーム岡崎」院長の後藤勤さん(38)=西尾市一色町=が陸上競技専任トレーナーとして、ロンドン五輪に帯同する。約50人のトップアスリートのコンディション調整を担う裏方は「各選手が心身ともに最高の状態で臨めるようにベストを尽くしたい」と意気込んでいる。(竹内雅紀)
鍼(はり)や灸(きゅう)、マッサージ師の資格を持つ後藤さんは、前回の北京五輪後からロンドン五輪までの4年間、日本陸上競技連盟から公式トレーナーとして各種大会での帯同を任された。
隔年開催の「世界陸上」には平成17年のヘルシンキ大会から4大会連続で日本代表チームのトレーナーを務めている。ロンドン五輪では日本オリンピック委員会(JOC)陸上競技専任トレーナー(2人)の1人で、同競技の男女約50選手を受け持つ。1人当たりの体のケア時間は30〜40分。筋肉の状態などをチェックしてマッサージをするだけでなく、選手の悩みや相談に応じることもあるという。
「単なるマッサージだけでは駄目。五輪のような世界最高峰の大舞台では、選手が神経質になったり、精神的に不安定になったりする場合もある。心のケアも重要です」と話す。
岡崎市出身の後藤さんは、美合小、竜南中ではバスケットボール部、中学3年間は駅伝部にも所属した。県立岡崎北高校では陸上部に入ったが、2年生の時に腰を負傷。治療を受けているうちにトレーナー職に興味を持ち始めたという。
トレーナーの勉強のために進学した中京大学では、ハンマー投げの第一人者室伏広治選手と同期生だった。修業を積んで26歳で独立し、今では故郷の岡崎でトップアスリートから小学生まで担当している。同市出身でロンドン五輪棒高跳び代表の山本聖途選手(中京大)は、中学・高校時代に後藤さんのケアを受けていた。
目標が五輪の専任トレーナーだったため「20年越しの夢がかなった。うれしい」と喜ぶ。前回の北京五輪では1カ月前に帯同不可となり、「悔しい思いをした」だけにロンドン五輪へ懸ける思いは人一倍強い。
日本陸連の公式トレーナーとして、一区切りとなる4年に1度の祭典。「トップアスリートの極上の筋肉に触れた時の手の感覚を忘れないようにしている。そうすれば調子の善しあしも判断できるから」と選手同様、気を引き締めている。
11日から国内合宿に同行し、31日に現地入り。8月3日に始まる競技に向けて最善を尽くす。