♪復興♪復興♪復興の湯―。伝統的な音頭にポップス調のハーモニーが響きわたる。岡崎市内の市民オーケストラに所属する同市職員の磯村泉さん(59)が、東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県陸前高田市で被災者やボランティアを癒やした「復興の湯」の復活を応援する「復興の湯音頭」を制作した。(今井亮)
復興の湯は、避難所生活で入浴できない被災者のために、陸前高田市の建設会社が設営・運営した無料の共同浴場。仮設住宅の建設が進み、被災者の入浴が減った後も、全国から集うボランティアの“憩いのひととき”として重宝された。しかし行政の運営経費補助が打ち切られたため、交流の場としても惜しまれながら、9月10日に閉鎖された。
磯村さんは5月、ラジオで浴場の石鹸(けん)が足らないことを知り、石鹸やタオル約20キロを寄付。それを機に建設会社社長との交流が始まり、「自分にできることを」と、クラシック音楽の特技を生かした創作曲のプレゼントを思いついた。
音頭は約1カ月で完成。歌詞は都都逸(どどいつ)をベースに3番まで作詞し、一般的な音頭にはないファルセット(声楽)や男性合唱を取り入れながらも、音頭らしく和風で明るい曲に仕上がった。
歌い手は岡崎市を中心としたコミュニティラジオ局「エフエムおかざき」が主催するオーディションで、グランプリを獲得した大学2年の杉本知穂さん(20)=岡崎市百々町=と高橋千春さん(20)=同市伝馬通4=のデュオ「Chiho×Chiharu」。同市中町の個人スタジオでこのほど、磯村さんによるレコーディングが行われた。「音頭と声楽のアンバランスが面白い一曲になりました」と磯村さん。曲を録音したCDは被災地に送る予定だ。
被災地では、閉鎖した復興の湯を復活させる動きがあるという。磯村さんは「音頭が復興の湯の復活を早める後押しになれば」と願い、「音頭が響く浴場で入浴してもらえる日が来ることを楽しみにしています」と期待を寄せている。