今年1月に火事で全焼した磯部ろうそく店の新店舗併用住宅の地鎮祭が11日、岡崎市八幡町の旧店舗跡地で行われた。建物は2階建て、延べ床面積は約196平方メートル(63坪)。1階に作業場と店舗、2階に事務所、地階にギャラリーを設ける。完成は来年2月の予定。いったんは消えた和ろうそくの“伝統の明かり”が、1年余で本格的に火をともす。(佐宗公雄)
地鎮祭には店主の磯部亮次さん(47)や親族、工事関係者らが参列し、玉串をささげた。工事の無事を祈った磯部さんは、感慨深げ。「失ったものは多いが、再起できるのも多くの人の応援があったからこそです」
火事直後、八幡町地内に仮事務所兼仮住まいの提供を受けた。磯部さんは近隣や顧客に「ご迷惑をお掛けしました」と頭を下げて回った。
2月下旬、廃業する名古屋市内の同業者から、ろうそくの製造工程で欠かせない竹串約3000本を譲り受けた。「老舗全焼、道具類すべてを失う」という報道で知り、「役立ててほしい」と申し出があったという。「ありがたかった」。これが再起の後押しをした。
3月初めには同市六名南に親戚の空き家を借りて作業場にし、ろうそく作りを再開することができた。
来年は新しい建物のギャラリー(約26平方メートル)で「ワークショップをしたり、ろうそくの明かりでお酒を飲む会、味噌(みそ)菓子を食べる会などを開いたりして、人が集う場所にしたい」と思いを巡らせている。