幸田町大草山寺にある天台宗の古刹(こさつ)・浄土寺の住職飯田大全さん(30)がこのほど、戦国武将が食べたとされる料理を再現した。「まちおこしのきっかけになれば」と、11日に開く護摩供祈祷(きとう)祭で祈祷者に提供する。 (竹内雅紀)
同寺は、平安初期の弘仁年間(810〜824年)に創建され、町内でも古い歴史を持つ天台宗の山岳寺院。周囲の六坊を含めて七坊から成っていたが、現存しているのは同寺(南城坊)だけ。本尊の木造薬師如来坐像と十二神将は町の指定文化財となっている。
“戦国料理”の基になったのは、当時を生きた深溝松平家四代当主家忠が記した「家忠日記」。深溝松平家の菩提(ぼだい)寺・本光寺に保存されており、飯田さんは同寺副住職の鶴田悟裕さんから日記を見せてもらった。日記には家忠が食べたとされる献立図があった。元料理人の飯田さんは興味を持ち、ほとんどの物を再現した。
毎年のように5月11日に家忠が家族や家臣などを連れて南城坊に祈祷していたことから、今回初めて同日に護摩供祈祷祭を開催し、料理を祈祷者への「おもてなし」として提供することにした。
料理は、輪島塗の漆器で提供され、たけのこご飯、吸い物、飛龍頭(がんもどき)、漬物、豆腐、酢の和え物、ウリ科の果実「夕顔」、戦国武将が出陣前に行う儀式(三献の儀)で食べたとされる三品(打ち鮑(あわび)、勝ち栗、昆布)など多彩。当時の非常食や軍用食として使用された豆飴(あめ)や求肥(ぎゅうひ)などの菓子類もある。
素材のほとんどを自らそろえた。手作り感あふれるヘルシーなスローフードについて「手間はかかるが、家庭ではなかなか味わえない料理。当時の食文化を通して、食の大切さを知ってもらいたい。また、若い人が寺院に関心を持つきっかけになれば」と飯田さん。祈祷後の客間では、非日常空間を体験できそうだ。
空前の歴史ブームや本光寺の大名墓所で昨年発見された大量の副葬品の影響などを受けて、町内でも歴史や文化の普及拡大に努める動きが活発になっており、今回の試みも新たな起爆剤になる可能性もある。飯田さんは「好評であれば来年以降も継続したい」と話している。
祈祷祭への参加は、事前予約が必要。戦国料理が食べられる特別護摩供祈祷祈願は午前10、11時、正午開始の3回に分けられ、定員は各回30人の計90人。祈祷料は3千円。午後1〜3時にも2千円で祈祷できる(食事は弁当)。
問い合わせ、申し込みは同寺(62―2153)へ。