服部工業(岡崎市羽根町、服部良男社長)の旧工場を撮影した写真展「三州釜百年の足跡」が3日から14日まで、旧図書館を改修した市美術館第5展示室を初めて使って開かれる。同市栄町で写真店を経営する鈴木智彦さん(69)が撮影した38点と、昨年11月まで"現役"だった同工場の様子を記録した写真30点を展示する。
鈴木さんは今年2月、服部工業に隣接する同社が母体の「暮らしの学校」を訪問。工場が解体されることを聞いて内部を見学させてもらったところ、「工場の歴史を感じ、すべてが新鮮だった」と感激。許可を得て写真を撮ることにした。
「これまでの写真人生の実力を試したかった」という鈴木さんは、片隅に残された道具や、長年の作業でくすんだ窓ガラスなどを撮影するうち「手応えを感じた」という。火が落とされたキューポラ(溶解炉)や、窓から見える満月を撮ろうと夜になってから出かけるなど、5月まで延べ10回ほど通った。
会場には古びたシャベル、なにげなく置かれた作業用手袋、床に落ちた落ち葉などの写真を展示。明治から大正、昭和を経て、工場が生産を停止してからも存在感を示している。
服部工業が提供した写真には、赤い炎が立ち上るキューポラ周辺で働く人たちや昭和初期の従業員らの集合写真なども。国内外に出荷された大釜の生産工場として活躍した、近代産業の貴重な現場を見ることができる。
会場の入り口には、旧工場で生産された釜と鍋を花器に、生け花が展示されている。花芸安達流の2人がアジサイ、ヤマボウシ、ユリを生けた。