春の褒章受章者が27日、発表された。西三河地方では、業務精励者をたたえる黄綬褒章に6人、社会福祉などに尽力した人たちに贈られる藍綬褒章に2人の合わせて8人。
受章者は次のみなさん。
「同業のみなさんを代表してお預かりさせていただくものだと思っています」と、まず感謝の言葉が聞かれた。
県表具内装組合連合会会長、岡崎市工芸大学訓練校副校長などを務め、業界のけん引役として信頼が厚い。県技能士会会長は昭和60(1985)年から21年間務めた。
120年続く表具屋「春香堂」の3代目。岡崎北高を卒業すると畑違いの菓子問屋に13年勤めた後、家業を継ぐ。自然が好きで暇さえあれば里山を歩き感性を磨いた。
ある時、書家の故杉原丘南さんの山野草展を見に行ったところ、中学時代の書道の先生だった。それが縁で杉原さんの作品を手がけ、表具師の腕を磨くことにもなった。伝統の技術に新しい感性を加えた作品は高い評価を受けている。
「人様が認めてくださって、初めて自分の可能性を信じることができるようになりました」と謙虚に話す。
二男の隆明さん(38)が全国大会で上位入賞しており、後継者にも恵まれている。
「会社勤めは性に合わない」と退社。3年間の修業のあと、好きだった花づくりを目指して農業の世界に飛び込んだ。26歳のときだった。
鉄工所に勤めた経験を生かして、ハウスを手造りして観葉植物の栽培を始めた。知り合いから「10年は苦労する」と言われたが、「10年間の苦労なら今しかない」と思った。
転機は昭和57(1982)年のオランダ視察。水耕栽培(ハイドロカルチャー)の現場を見た。「土の代わりに水を使う。靴を脱いで家に上がる日本には最適だ」
水耕栽培でサボテンの栽培を始めたところ口コミで人気が広がった。商品は市場を通さず全国に直送。13年前には販売会社も設立。中の水が見える鉢で特許を取得したアイデアマンでもある。
4年前から一色町でハウスを借り、再び露地で植物栽培を始めた。「会社勤めも役に立った。運が良かった。これからは原点に戻り、ひと鉢ずつ丁寧に育てたい」とますます意欲に燃えている。