生殖幹細胞の正常維持
セブンレス遺伝子研究
再生医療などに期待
基礎生物学研の小林教授ら
自然科学研究機構(岡崎市明大寺町)基礎生物学研究所、小林悟教授らの研究グループは、精子をつくる生殖幹細胞を正常に維持するのに、セブンレスという遺伝子が重要な役割を果たしていることを世界に先がけて解明。3日付の米国専門誌「デベロップメンタル セル」で発表した。
精巣の先端にある生殖幹細胞のさらに先端では、幹細胞から精子への分裂が繰り返されている。幹細胞に信号を送り、この働きを制御しているのがニッチと呼ばれる細胞群で、ニッチの働きに関する研究は世界中で精力的に行われている。
小林教授らは、幹細胞やニッチ内で確認されているセブンレスという遺伝子の役割を研究。突然変異で機能しなくなったセブンレス遺伝子を使ってショウジョウバエで実験してみたところ、ニッチが異常に拡大し、幹細胞や精子に分かれる細胞が精巣に過剰に蓄積され、精巣が腫瘍化した。
このことから、正常に精子を作り続けるために、腫瘍化の危険性を回避しているのが、セブンレス遺伝子であることが分かった。
幹細胞数の異常な減少や増加は、腫瘍化など器官の正常な機能をさまたげる要因になると考えられ、適正な数の幹細胞を維持する機構の解明は、生物学や医学の研究分野で特に注目されている。
幹細胞は、器官の成長や維持、さらに再生時に重要な役割を果たす。今回得られた結果は、多くの器官におけるニッチや幹細胞の形成機構を明らかにする基盤となり、生殖・再生医療にもつながる可能性があると期待されている。